経営

在宅勤務が労働者の分断を広げる

日経は、在宅勤務を新しい働き方のお手本であるかのように、称えている。 だが、在宅勤務の恩恵に与れるのは、労働者の10%以下の恵まれた層だけである。 恵まれた労働者を安全地帯に退避させる方法である。 残された90%は、これまでと変わりなく過酷な現場…

日経「ROE偏重経営 もろさ露呈」の変わり身の早さ

4/29日経「想定外、備えはあるか」の記事である。 日経はつい最近まで、ROEを高めるには、負債を増やして自己株式買いを行うのがよいとしきりに勧めていた。 日経のこの記事は、「経営の耐久性が長期の成長力を左右する」というグラフを示して、自己資本比率…

コロナ・ウイルス(CV)後のM&Aに対する経営判断

4/2日経には、計画したM&Aに対する姿勢の違いを示す記事が2本掲載された。 (1)ゼロックス、HP 買収断念 (2)昭和電工、1兆円買収に暗雲 日立化成TOB1か月遅れで開始 (1)は、ゼロックスがHPに仕掛けた敵対的TOB撤回する記事である。一株24ドルで仕掛け…

バークシャー・ハザウェイ(BH)の人生100年

2/24日経はBHの近況を伝える。ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」「大型買収より上場株運用」と。 BHは時価総額が5,600億ドルで、現金を1,280億ドル抱えているそうだ。記事は資金の使い方を論じるのだが、そのこととは離れて、驚くのはトップのバッフ…

楽天VS公取 送料無料問題で対立

2/23日経によれば、楽天の送料無料問題で、最大の対立軸は、「出店者は無料化によって利益を得るか、不利益を被るか」であると指摘する。 そこまで論点が煮詰まっているならば、将来を予測するのは時間の無駄である。試験的に例えば1年間実施した場合の実績…

前田道路の捨て身の焦土作戦は成功するか

前田道路は前田建設からのTOB提案に対し、特別配当を実施し、買収を阻止する。自社の資産内容を悪化させて買収を断念させる「焦土作戦」と言われる策である。 前田建設のTOB提案(一株当たり3,950円)に「前田道路が単独純資産の10%に相当する額を上回る額…

楽天 送料無料は消費者にメリットはあるか

楽天の送料無料提案に対し、公取は優先的地位の乱用として調査に入る。 楽天が送料無料にすると、誰にメリットがあって誰が不利益を被るのか。 楽天が主張するように、楽天モール全体で売上が増えるなら、 消費者 〇 楽天 〇 出店者 〇または× 出店者の中に…

JDI白山工場の売却検討 アップル・シャープと交渉

迷走を続けていたJDIが、主力の白山工場をアップル・シャープへ売却することで決着しそうだ。白山工場の建設費は、1,700億円。売却予定額は、800-900億円、アップルとシャープの負担割合は固まっていない(12/27日経夕刊)。まだ最終決着していない。価格次第…

巨大IT規制案がまとまる データ寡占を防ぎつつ、技術革新を通じた経済成長を促進することは出来るのか

12/18日経は「データ寡占防ぎ成長促進」「巨大IT 政府が規制策」の見出しを掲げる。 新法による契約の条件の透明化、個人情報保護法改正に伴う新ルール導入、独占禁止法の運用強化でのデータ囲い込み防止の3本柱だ。データ寡占を防ぎつつ、技術革新を通じた…

地銀の利ざやはマイナスか 貸付をしないことも選択肢

地銀の利ざやは、ほとんどゼロであることが、下記の引用から分かる。信用コストが少し上ぶれするだけで、逆ざやになりかねない。資金調達コストはマイナス金利のおかげで、無視し得る。 ここで、信用コストは潜在的なもので、顕在化するまでは損益には反映さ…

「(パナソニックが)何の会社なのか、それは私も自問自答している」と漏らす津賀社長の苦悩

パナソニックが半導体事業から撤退する。 パナの最近の事業整理は、住宅事業のトヨタとの統合、液晶パネルからの撤退、EV用電池のテスラからトヨタへのシフトなど、縮むばかりで伸びる分野が見えてこない。このままではパナソニックは消滅してしまう。 津賀…

 Business Roundtableが発表した5点の企業目的についての声明

この声明の一番目が、顧客への価値の提供(Delivering value to our customers)である。 これは本当だろうか。企業の本音は別ではないのか。 最近新しい経営手法として、ダイナミック・プライシング(DP)が注目を集めている。 DPでは、消費者余剰が最小化さ…

日産四半期業績Q2(7-9)が発表された

注目の日産Q2業績発表があった(11/12)。 Q2でどれだけの変化を示せるかであった。 Q1に比べ、数値は大きく改善している。 日経の報道には納得できない点がいくつかある。 ・業績低迷の責任をすべてカルロス・ゴーン(CG)時代の戦略(台数の拡大)に帰して…

ヤフーとラインの統合、収穫逓増企業は規模を拡大する必然性がある

11/14日経「ヤフー・ライン統合へ」「米中の巨大IT追う」 新会社を設立して、ソフトバンク(SB)とネイバーが50%ずつ出資する。新会社がZHD(現在のヤフーの親会社)を子会社化して、その下にヤフーとラインがぶら下がる。 ヤフー ライン 売上、億円 9,547 2,…

自動運転の覇者は、自動車メーカーかグーグルか

この問題への回答は、これまで明確なものは示されなかった。汎用性があって機能の高いソフトを提供することが必要だが、どちらの陣営が潜在力を持っているのか。そのような環境を作り出せるのか。 この問題の回答を、10/28日経経済教室「革新迫られる自動車…

日産のトップ人事が決まる、調整が重視され経営力の評価は不明

内田誠(社長兼CEO,53)、アシュワニ・グプタ(COO,49)、関潤(副COO,58) 10/9日経は、選考の過程を伝える。 内田「最もビジネスを分かっているが若い」 グプタ「アライアンスを熟知しているが、日本人でないことは気にかかる」 日産CEOとして誰が適任かよ…

M&Aに減税措置、内部留保の活用促すという記事のおかしさ

9/30日経が、甘利自民税調会長に聞く、という記事を掲げる。 この記事で、M&Aをやると、内部留保が減るような印象を与える。だが、成功するM&Aは内部留保は増える。内部留保が減るのは、失敗して減損処理に追い込まれた場合だ。M&Aの失敗を推奨しているので…

ユニゾンVS HIS と ココカラVS マツキヨ VS スギ

HISはユニゾンに40%を上限に一株3,100円の買収提案を行なった。これに対し、ユニゾンは、米投資会社・フォートレスと組んで、同4,000円で全株を買い取り上場廃止することを発表した。 この買収劇は、買取価格が明示されているので分かりやすい。 これに対し…

親会社ヤフーとアスクルの主導権争い

話し合いで決着しないとなると、① ヤフーはアスクル株を転売して手を引く、② ヤフーは敵対的買収を行い、完全子会社とする、③ アスクルはスポンサーを見つけてヤフーの持株を引き取ってもらう(アスクルが買い戻すことを含む)。 親子上場の矛盾が噴き出して…

日産大幅減益のその先

7/26日経「日産、12,500人削減(9%相当)」「海外工場閉鎖、生産能力1割減」「営業益99%減、4-6月」16億円となった。 西川CEO (17年4月就任)のQ2以降のV字回復を印象付けるために、Q1(4-6)で過去の遺産を整理したのだろう。Q2以降の業績回復が見もので…

マイクロソフト(MS)は第2の成長経路に入ったか

MSのQ4(4-6)の純利益が前年比49%増の、131億ドルだった。 CEO サティア・ナデラ(Satya Nadella、 1967年8月19日 - )は、「あらゆる産業のリーダー企業との深い協業によって、過去最高を達成した」と述べた(7/19日経夕刊)。 この素晴らしい業績から、企…

初任給は上がっても、割を食うのは中高年

7/3日経「初任給上げ実施7割」「デジタル人材取り込み」「年功賃金見直し5割」。 初任給が上がるのは結構なことだが、その原資をどこからかと記事を読むと、企業の生み出す付加価値が高まったのではなく、中高年の賃金をカットしてひねり出しているのである…

生産性向上は経営者から、働き方改革ではない

幸せ食堂(京都)残業ゼロなのに年収600万円を払えるという記事があった。 この記事を読むと、つくづく働き方改革は労働者の働き方が悪いから生産性があがらないというのは悪質なキャンペーンだと分かってしまう。 まず経営者にはどうすれば無理をしないで付…

あの百均ダイソーがAIの先進企業

ダイソーのAIへの取り組みを伝える記事を見た。 6/17 Business Insider(BI) ダイソー快進撃を支える「毎晩105億件データ処理」する需要予測システムはどう生まれたか https://www.businessinsider.jp/post-192845 ダイソーの企業規模は、とてつもなく大きく…

米フェイスブックが発表した通貨「Libra(リブラ)」

ビット・コインのような投機商品ではなく、日本円、米ドルやユーロを裏づけとする通貨。2020年のサービススタート。Libraを管理したり送金したりするための専用ウォレットアプリは「Calibra」という名前となり、同名のFacebookの子会社が開発・運営を担当す…

シャープがJDIを支援

6/15日経は、シャープの戴正呉社長とのインタビュー記事を載せる。 戴社長はJDIへの支援について、「何も話は来ていないが、シャープとしてはオープン。私からではなく、向こうからそういう要請があれば検討する」と述べている。 JDIを支援する予定の台中連…

親子上場の利益相反 ルノーと日産の場合

国境を越えた親子上場の利益相反があらわになっているのがルノーと日産の膠着である。 この問題を解決する一つの切り口は、少数株主ファーストの観点である。 日産がルノーの完全子会社となる 日産がルノーの持株を買い戻す。43対15の持株比率を15対15にする…

ルノーとフィアットの統合構想は1年前から検討されていた

6/6各メディアは、フィアットはルノーとの統合案を取り下げたと報じる。日産と仏政府が統合にためらったためだという(6/6WSJ)。 以下は記録のためである。 6/4ロイターは、統合構想は1年前から検討されていて、日産にも伝えられたと報じている。 これだけ…

フィアット(FCA)、ルノーと経営統合 日産はどうなるか

統合会社はオランダに置く。統合会社の株主は、フィアット株主50%、ルノー株主50%となる。取締役会は、フィアット4、ルノー4、日産1、その他(たぶん独立)2、計11。 目立つのは日産の取締役枠が1名で、これでは日産はフィアット、ルノーの言いなりになっ…

JDI破綻 官製企業再生は無理なのか

JDIの頓挫について、日経経済教室は3連載でその原因を探っている。5/21上、利益無視の技術神話見直せ、長内厚・早稲田大学教授、5/22中、技術と経営の掛け算を、若林秀樹・東京理科大学教授、5/23下、創造へアジアと連携を、中田行彦・立命館大学名誉教授で…