自動運転の覇者は、自動車メーカーかグーグルか

この問題への回答は、これまで明確なものは示されなかった。汎用性があって機能の高いソフトを提供することが必要だが、どちらの陣営が潜在力を持っているのか。そのような環境を作り出せるのか。

 

この問題の回答を、10/28日経経済教室「革新迫られる自動車産業」「最適化のわなに陥るな」柴田友厚・東北大学教授が、わかりやすい例を引いて解説する。

ポイント;

・自動運転装置は車の価値を高める補完財

・本体と補完財が共に進化できる仕組みを

・転用性重視の開発動機持つ中立組織作れ

 

柴田教授は車と自動運転装置の関係を、70年代に発展した工作機械とCNC装置の関係を例にする。当時日本では、CNCにはファナックなどの異業種が参入した。これに対し、有力な工作機械メーカーの多かったアメリカでは、工作機械メーカーが自らCNC開発に参入した。当初は、工作機械メーカーが、工作機械を知り尽くしている利点から、先行した。

 

80年代に入り、ファナックのCNN装置を装備した日本の工作機械メーカーが世界の先頭に踊り出た。日本のCNC装置には、多くの工作機械メーカーから要望が流れ込む技術集約装置となり、それが広く使われることで工作機械の技術水準が向上し、それがCNC装置の進化を促す「共進化サイクル」が形成された。

 

自動車メーカーは、自社の売れ筋モデルに最適な自動運転装置を作る動機がある。汎用装置を提供する側は、世界中の走行記録を入手できる利点がある。当初は、自動車メーカーが優位に立つかもしれないが、圧倒的な走行データを入手する汎用装置提供側が次第に優位に立つであろう。

 

日本の完成車メーカーは、自社の車の最適化に囚われる「最適化のワナ」に陥らないことが肝心である。

同じことは、様々な分野で生じている。例えばPCである。MSとインテルが汎用性の高い、かつ機能の優れたソフトや部品を開発したので、業界の覇者となった。

 

トヨタがレクサスに最適な自動運転装置の開発の乗り出したら、警戒すべき知らせと受け止めるべきであろう。

 

10/31日経は、日立の自動車部品会社が、本田系部品会社3社と合併すると報じていた。異業種からの参入が激しくなるのであろう。車メーカーにとって、エンジン、電池、運転制御を他業種に抑えられると、組み立てとデザインしか残らない。