JDI破綻 官製企業再生は無理なのか

JDIの頓挫について、日経経済教室は3連載でその原因を探っている。5/21上、利益無視の技術神話見直せ、長内厚・早稲田大学教授、5/22中、技術と経営の掛け算を、若林秀樹・東京理科大学教授、5/23下、創造へアジアと連携を、中田行彦・立命館大学名誉教授である。

 

特に中田氏は元シャープ社員で、当事者としての臨場感がある。

今回のJDIの失敗は、同時期にホンハイが救済したシャープがあったので、経産省式経営とホンハイ式経営を対比するという、まれな機会を提供してくれた。

 

そもそも経営は、未知の未来への挑戦である。事前にどんな優れた経営戦略を用意しても、時に失敗することがある。評価は当事者には遺憾なことであるかもしれないが、経営は結果責任であるということである。運・不運が作用したことがあるかもしれないが、それもひっくるめて結果に責任を負う覚悟がいる。

 

JDIとシャープを比較すると、

・JDIとシャープが生き残りをかけ、経産省流とホンハイ流の再建策が競い、二通りの企業再生のやり方があったのは、日本の液晶産業にとって幸運であった。もし経産省の主張したようにJDIとシャープを合体して再建に進んでいたら、おそらく合体事業全体が壊滅的になって、日本の液晶事業の未来はなかっただろう。悪いシナリオは、技術者も生産要員も散逸して液晶事業を再興することの手掛かりを失うことである。

オーナーが外資になるのは、次善か三善であるが、産業が失われるよりましである。

 

・シャープをJDIに統合しようとしたとき、まことしやかに技術が流出するとささやかれた。だが、今回JDIを台中連合にたたき売りしたことから、そのようなささやきはフェイクだったことが明らかになった。今後も、官から流される情報には注意しなければならないことを教訓として得られた。

 

・台中連合がJDIを復活できたなら、経産省流の企業再生は役に立たないことが証明されるだろう。

 

・JDIが上場(14/3)した際に、産業革新機構の持株比率は70%から25.3%になった。持ち株を残していたのは、ファンド運営としては鉄則に反する。投資が回収できると見極めたら、全株を速やかに処分すべきであった。株価は上場時の1割以下になって投資の回収は見込めなくなった。影響力を残そうとしたのであろうが、それが投資回収という第一の目的の達成を鈍らせた。

 

三国志に「泣いて馬謖を斬る」という物語がある。馬謖は優れた戦略家で、街亭の戦いでリーダーに抜擢された。馬謖孔明の命に従わず魏に大敗したために、孔明は泣いて斬罪に処した。同時に孔明は、自らも丞相の位から3階級降格し、右将軍になった。JDIの場合、このような規律あるケジメは見られない。