日経 ユーロ、成長への目配り、JR東海・葛西氏インタビュー

平成23年12月16日(金)

今日の日経はこれまでの論調が変わる転換点のように思われる。

1. 一面特集「ユーロ 遠い安定」
バーナンキ議長の発言を引用、「ユーロが崩壊を始めれば、米経済も打撃を受ける」と共和党上院議員に伝えたという。これまでの日経はEU首脳の尻を叩くだけであったのが、米国内の動きを紹介することで最悪の局面への注意を喚起している。今後の記事の掘り下げが注目される。

2. 社説「成長への目配りを忘れるな」
短観の発表にビビッタのか、「社会保障と税の一体改革をなし遂げるのは重要だが、成長への目配りも忘れてはならない」とこれまでの増税一本やりからの方向転換。財政と経済のバランスの取れた解説記事を期待する。

3. 「東電再建 組織区分けも」「支援機構運営委員 葛西JR東海会長に聞く」
原発は場合によっては国で引き取って処理するという考え方はあるだろう」との発言。
ここでいう「原発」は福島第一か東電管内の全原発をいうのかは不明だが、後者とすれば画期的な発言だ。直前の「純粋な民間企業」という言葉からの文脈では、後者のように解される余地はある。この議論の広がりを期待する。


「目的合理性がない限り、安易に資本注入を口にすべきではない」「新しい企業体に資本の充実が必要なら、資本注入もあり得る」
まずは、東電の今後のビジネスモデルがどうなるかを示すのが先決である。報道されている兆円単位の資本注入を行うのは、現状維持ということぐらいしか将来への展望は見られない。


「大きな制度改革を先行させるのではなく、足元で火がついている東電の議論が第一だ」
まず火事を消して、火事のあとにどんな建物を建てるかである。いきなり、発送電分離なんて抽象論を振りかざすべきではない。良い建物を建てれば、他もまねをすることになろう。


日経が変わろうとする兆しを見せ始める一方、旧態依然しているのは国家戦略会議の「日本再生の基本戦略」素案である。相変わらず、再生可能エネルギーなど環境分野の育成やインフラ事業の海外展開を成長の柱に据え、と産業振興策のようなことをいっている。成熟国家としての経済ビジョンをもてないのだろうか。前原氏も最近、輸出第一みたいなことを言っていた。

大機小機「2012年 起きろ、飛び出せ、日本」恵海氏は、「第3に、輸出優遇策、海外M&A推進策を実行し、貿易収支の黒字、投資収益のいっそうの拡大を図る。海外で買収した企業に家族とともに20−30年勤務する体制を整備する」と述べている。恵海氏には、円高のときに国難だと騒がないようにと申し上げたい。円高は氏の提言の帰結として招来するのであるから。後半の海外に勤務する体制は賛成だ。ただ、海外で買収した企業ではなく、加州、豪州、越国の大農場を買収した若き農業家たちと言い換えたい。彼らの栽培する安くてうまいコメを食べる度量は日本人にはあるだろう。