「東電改革、何が必要か」 東電はどんな会社になるの

4/18日経「東電改革、何が必要か」は社外取締役に就任予定の冨山和彦氏、開沼博立命館大学准教授、橘川武郎東京理科大学教授のインタビュー記事を掲げる。東電の新たな再建計画と6月の経営陣刷新を受けてのものである。

再建計画の中心は既存事業を残し、他社との再編・統合を広範囲に行うことである(規模の経済を狙っているように思える)。
冨山氏と開沼氏の意見は、東電の事業形態がそのまま続くことを前提に語られている。これに対し、橘川氏は大胆なビジネスモデルの変換を提案する。

東電の将来を考える時は、東電が今後どのようなモデルで事業を展開するのかが前提にならなければならない。

東電のミッションは今後30年の間に15兆円の福島復興費用を確実に捻出することである。事業環境の変化は電力自由化により総括原価方式が廃止されることである。総括原価方式の廃止により、テールリスクのある原発は当然、ガスや石炭による火力発電も価格変動リスクにさらされることになる。原発の損失を原発で取り戻そうとする考え方は悪い冗談にしか思えない。東芝のWHと同じ轍を踏むことになりそうだ。

橘川氏の提言は
(1)原発を含めて火力発電をすべて売却し、売却代金を福島復興費用に充当する。
(2)東電に残されるのは、送電網と配電網になる。日本の電力会社の競争力の源泉は発電ではなく、送電網の系統運用力であると橘川氏は指摘する。東電の送電網と世界最大級の配電網を希薄化させる他社との統合を提案する再建計画に反対する。

橘川氏の提言は次のように評価できる。
(1)発電事業に参入する各社は発電設備を自前で用意する必要がなくなり、全体として設備の過剰がなくなり、電力料金の引き下げに役立つ。
(2)送電と発電に特化することにより東電の会社規模は大幅にスリム化される(おそらく現在の1/3以下)。6月に予定されている新経営陣は、送配電に特化する会社規模に比べて過大である。
送配電は、事実上の独占事業で他社の参入による価格競争がないので、安定的に収益を稼げる。殆どリスクなく、30年間で15兆円を稼ぐのは難しいことではない。立地として一番不利な北電ですら、売上高72百億円、経常利益280億円(利益率3.8%、16年3月期)を計上している。

橘川氏は次のように予言する。
「仮に東電や中部電が原発を手放し、新しいビジネスモデルを築けば、旧態依然とした原発依存会社は競争に敗れるところも出てくるのではないか」と。

30年先のことは誰も分からないが、仮説を立てて検証しつつ、先に進むのであろう。現状維持が続くと思っていては時代に取り残される。