大手テック企業への規制は妥当なのか

日本の規制当局は、テック企業への規制に前のめりに見える。それは、政策として正しい順序なのか。

 

11/6日経Opinion「米IT激化する本丸攻め」「アップル検索進出の意味」リチャード・ウォーターズ Financial Times ウエストコースト・エディター

論者は、アップルがネット検索の開発強化に乗り出したことを取り上げることにより、表題の本丸攻めを展開する。

ここで面白いのは、米規制当局の姿勢だ。

規制当局は、アップルにグーグルの検索エンジンを搭載させるように、グーグルがアップルに多額の報酬を支払っていたことを問題とした。

アップルがグーグルとの取り決めを失うことに備えて自社で検索強化に乗り出したのは当然であるとする。

 

規制当局がこの段階で反トラスト法違反の疑いでグーグルを提訴したのかである。

 

検索サービスを巡る戦いが始まりそうな状況は、2つの疑問を浮上させる。

  1. なぜ巨大テック各社は、それぞれが成功を収めた中核事業の分野でお互いにもっと競争してこなかったのか。
  2. 規制当局はこれらテック各社が互いにもっと開かれた競争をする方向に追い込めるか。

 

1の答えの一つは、大手テック各社は、これまで互いの縄張りをさほど侵さなくても世界屈指の時価総額を誇る大企業に成長した。

もう一つは、ライバルに真っ向から戦いを挑むのは、おうおうにして失敗に終わる。テック各社は、互いに競争する代わりにビジネス上のパートナーとして、あるいは顧客として支え合うことで繁栄を謳歌してきた。

 

アップルによるネット検索の開発強化は、テック各社が互いの中核事業にこれまで以上に深く攻め込もうとしていることを物語る。

各社の企業規模と野心が拡大し、互いに衝突を回避できない段階に到達してしまったということだ。

次世代のプラットフォームの支配権を握りたいという共通した動機に突き動かされている。

 

以下は、評者のコメント。

規制当局が動き出したのは、テック各社が十分に大きくなり、同時に互いの協調より競争に流れが傾いている機会をとらえた。

 

わが国の動きを見ると、テック一流国並みにテック会社の膨張を警戒しているようだが、政策発動の順序を誤っていると言わざるを得ない。

今は、国内テック会社を育成する段階で、米で見られるような弊害はあらわになっていない。出品者などに配慮する姿勢がみえるが、消費者には収穫逓増の恩恵が行きわたるようにするのが今の課題である。