ソニー復活の日と企業統治

ソニーは2009年3月期から15年3月期までの7期中6期が赤字計上。とても上場営利企業とはいえない惨状である。

ソニーに限らず、パナソニックやシャープも酷いことになった。その前には日立もおかしくなった。富士通NEC には以前の面影はない。揃いも揃って愚かな経営者がいたとは思えない。10年程前迄は電気機器業界は比較優位のトップに位置していて優秀な人材を集めていた。自動車産業は、成長性に乏しい二番手集団と見られていた。それが、外部環境の激変で電気機器産業が脱落し、自動車メーカーがトップに躍り出た。自動車メーカーにとって幸運だったことは、貿易摩擦からアメリカで現地生産を行ったことであろう。この社運をかけた進出によって、本場の競合相手やユーザーにもまれて強い体質になっていった。

電気業界は基本的に国内に安住し、これまでの成功体験(余りに大きかった!)から国内の業界内の思考パターンが野郎自大的に均質化され、世界の業界の変化に目を向けようとしなかった。

いまだにその思考方法にとらわれているのが最大の成功体験を持っているソニーだ。頭ではわかっていても体がそれについていけないようになっている。

このような時に現状を突破できるのは、狂気を秘めた指導者である。これまでのソニーの経営者は平時には有能であっても、有事に火事場の馬鹿力を発揮する尖がり過ぎるくらいの人材ではなかった。織田信長西郷隆盛のような。

ソニーが存続する道は二つある。(1)利益の出ない電気事業を切り捨てて、エンタメと金融の会社になる。誰にでもできる教科書的な方法である。栄光のソニーは戻ってこない。(2)狂ったような天才的経営者を世界中から探し出して、彼に運命を託す。リスクはあるけれど、もしかしてアップルを超える企業へ変身できるかもしれない。

企業統治のお手本といわれるソニーが不振に陥ったのは、皮肉でもなんでもない。安倍内閣の成長戦略に企業統治の改革を掲げるのは根本的な認識の誤りがある。企業を発展させるには有能な経営者を見つけ出すことに尽きる。近い例では、先週NYSEに上場したアリババのジャック・マー氏だ。孫正義氏は、アリババが創業してまもなく20億円投じた。それが、今回の上場により8兆円に、なんと4,000倍に膨らんだ(持株比率32%)。ソニー時価総額は、先週末で約2兆円。違いは歴然としている。
世界を見渡せば、マー氏ほどではなくても途方もない経営者はいる。

ソニー復活の日を待ちたい。