クルーグマン教授:消費税率を5%に戻す!

消費税率の10%への引き上げを延期すべきだという声は結構あるけれど、5%に戻すという意見は、さすがにクルーグマン教授ならではだね(下記WSJの記事)。
教授の提言が採用されることはあり得ないだろうし、まともに論じられることもないだろう。
それでも、経済と財政を考える良い材料だ。

家計は日銀の金融緩和によるインフレと消費税のダブルパンチで、実質所得の減少に直面している。2%のインフレだけなら耐えることができたが、それに上乗せされた消費増税が限界を越えた。

家計の収入をアシストできるのは、所得減税か教授の提案する消費税を5%に戻すことである。
政府が唱えるように、法人減税を行いその財源を賃金上昇に充当するのは、話が逆立ちしていてお話にならない。
家計という金の卵を産むガチョウを締め上げて売り上げを減らしてしまえば、法人税を払うどころではなくなって、せっかくの法人減税が空回りしてしまう。

首相は中立の姿勢を装うが、人事や閣僚の発言からは消費増税は規定路線であることは明らかである。
壮大な経済実験は幕引きとなるのだろう。

9/20 WSJ
ポール・クルーグマン氏、安倍首相の消費増税に警告

ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、日本の消費税が10%に達すれば、デフレ不況に逆戻りし、悲惨な状態になるとみている。
プリンストン大学教授で米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニストも務めるクルーグマン氏は今週発売の「週刊現代」に掲載されたインタビューで、安倍晋三政権発足から12月で丸2年たつにあたり、安倍首相の経済政策について持論を披露した。
週刊現代の記事によると、クルーグマン氏は首相が間違った人々の声に耳を傾けてしまい、日本の景気回復は4月の5%から8%への消費増税で危うくなったと主張した。
首相は2015年10月に消費税をさらに10%にまで引き上げるかどうかを検討中だが、クルーグマン氏は首相が消費税を5%に戻し、インフレ期待を引き上げるべきだと述べた。

こうした意見は、クルーグマン氏の日本の経済政策に対する見方を長年追ってきた人たちにとっては驚きではない。1998年には次のような見解を示している。「構造改革や財政拡大が必要なだけの需要をもたらすという説得力ある議論が展開できないかぎり、経済を拡大するための唯一の方法は実質金利を下げることだ。そしてそれを実行する唯一の方法は、インフレ期待をつくりだすことだ」

10%への税率引き上げについてはエコノミストの間で意見が割れている。本田悦朗内閣官房参与は最近のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、1年半先送りすべきだと述べた。一方、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長はWSJに対し、現在の景気減速に人々は過剰反応しているにすぎないとし、将来の社会保障費を賄うために増税は必要だとの見方を示した。

クルーグマン氏は、中国の経済についても「投資バブル」と表現し、懸念を表明。民衆に対する自らの正当性を
強化する必要に迫られた中国当局が日本との戦争に踏み切れば、深刻な経済的打撃を両国に及ぼすことになると述べた。

原文(英語):Krugman Warns Abe on Tax Increase
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/09/19/krugman-warns-abe-on-tax-increase/