シャープの減資、資本金1億円へ 攻めの企業統治指針は機能しない

シャープは15年3月期に2,000億円以上の赤字を計上する見込みで、これに対して次の対策を検討している。
1. 資本金を1億円へ減資する
2. 三菱とみずほの借入金2,000億円をDESによって、資本化する。

先週末の報道であったため、株価への反映は本日の寄り付きとなる。寄り付きは、80円安の178円。DESが178円をベースに行われるとすると、二行は1,123.5百万株を取得する。既存発行済株式数と合算すると、39.7%保有の大株主となる。既存株主は、今後の利益に対して、60.3%の持分を有することになる。既存株主にとっては、大きなダメージである。既存株主の利益が侵害される時、株主は取締役会を頼りにするのであるが、取締役会がどのような役割を果たしたかは報じられていない。

シャープの取締役は社内8名、社外3名。監査役は5名中3名が社外。企業統治指針は満たしている。

シャープが資金の導入を図るために第3者割当増資を行うと、既存株主の利益参加割合は更に低下する。つまり、今回の減資スキームは、既存株主を犠牲にして、大口債権者、今後出現するであろう出資者、現経営陣(地位保全)の利益を確保しているのである。取締役会は、「攻め」の姿勢は結構だから一般株主の利益を保護するように動かねばならない。

企業統治指針は、露骨に株主利益の擁護を打ち出すのが、本来の役割だと思う。
その意識があれば、他にも選択肢はあっただろう。

企業統治指針の目的と定義
本原案は、コーポレートガバナンス・コードの目的を「健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ること」であり「会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、経営陣がリスク回避に偏ることなく、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えること」であるとしている。

財務データ 14年9月30日
株主資本合計    3,437 億円
包括利益累計額  ―1,170
少数株主持分     125
純資産合計額    2,392
発行済株式数   1,701.2 百万株 
一株当たり純資産  17.74円

5/9 ロイター
http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPKBN0NU07X20150509

シャープ、資本金1億円への減資を検討 累損一掃へ=関係者
2015年 05月 9日 17:05 JST 記事を印刷する | ブックマーク [-] 文字サイズ [+]

5月9日、経営再建中のシャープ <6753.T>が、1200億円以上ある資本金を1億円に減資する方針を固めたことがわかった。写真は昨年2月撮影(2015年 ロイターYuya Shino)
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[東京 9日 ロイター] - 経営再建中のシャープ (6753.T: 株価, ニュース, レポート)が、1200億円以上ある資本金を1億円に減資する方針を固めたことがわかった。関係者によると、主力2行から優先株などの資本支援を受ける一方で、大幅減資で累積損失を一掃するねらい。6月下旬の株主総会優先株の発行と減資の承認を受ける予定。

14日に公表する中期経営計画に盛り込む。減資で累損をなくせば、剰余金を配当に回すことができる。将来の復配の基盤を整える。

シャープの資本金は14年3月末で1218億円。過去2年で計9000億円以上の最終赤字を計上したことで、単体の繰り越し欠損金が208億円あった。

関係者によると、15年3月期は2000億円以上の最終赤字を計上する見込みで、16年3月期も最終赤字の見通し。累積損失がさらに膨らむため、資本金を減らして剰余金に振り替え、赤字を補てんする必要があると判断した。

資本金は1億円に減るが、すでに、主力取引行のみずほ銀行東京三菱銀行から2000億円規模の債務株式化(DES)の資本支援を受ける方向で合意している。さらに、企業再生ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)からも250億円の出資を受ける見込み。

資本金が1億円になれば、税法上の定義では「中小企業」に分類される。99%を超える大規模減資だが、100%減資ではないため、株主の持ち分は変わらない。だが、その後の資本支援で発行済み株式が増えれば株主の持ち分が目減りする可能性がある。

(村井令二)