東電の新再建計画 他社との事業再編・統合は疑問が多い

東電は廃炉費用など今後30年間に15兆円を捻出しなければならない。そのためには手許の資源を最大限活用して収益性を高めなければならない。
3/23日経によれば、東電は今春に改定する再編計画の骨子を22日に発表した。骨子では他社との事業再編や統合をを積極的に進める方針を明記した。具体的には、中電と火力発電の統合、送配電や原子力も他電力との再編を目指す。

疑問となるのは
・火力を他社と統合することによりなぜ収益性が高まるのか
・テールリスクを抱える原子力は切り離すべきではないか
・高収益の送配電を他社と共同で運営するのは利益を外部に流出することになる

原子力のリスク
福島第一で分かったのは、原子力発電所の位置が市街地の東にあるか、西にあるかによって被害が大きく変わることである。日本列島には常に西からの風が吹いている。このため福島第一の放射能汚染の多くは太平洋に流れた。柏崎刈羽の北東には柏崎市(人口9万人)、新潟市(距離88km,人口81万人)が位置する。

 送配電の収益性
送配電の収益性は、事業部門の損益が開示されていないが、売り上げについてはある程度は推測できる。

(1)販売電力量からの推定
2.4千億KWH(16年3月期)×(9.26+4.07)/2=1兆6千億円

16年3月期 売上予想 5.3兆円
      販売電力量 2.4千億KWH
従量制契約における託送料金KWH東電エリア 低圧供給 9.26円 高圧供給 4.07円(家庭向けと事業向けのシェアを50:50と推定する)

(2)東電による試算では、送電網利用料は家庭向けの料金の3割程度とされる。
これをそのままあてはめると(事業向けも同じとして)、1.5兆円ほどの売上を推定できる。

東電の送電網利用料 一般的な家庭の電気料金(月額7982円)のうち2558円と3割程度を占める見通し(下記に引用した産経の記事)

(3)コストの推定は出来ないが、強みは多い。
長い間に構築された送配電網であるので償却は相当に進んでいると思われる。
地域独占が事実上は保証されているので新規参入は不可能。
需給をバランスさせるノウハウは東電の独自のもので、新規参入は難しい。
最も送電量の多い地域なので、抜群の収益性がある。これを他社に開放するのは利益の流出になる。
1.5兆円ほどの売上があれば、3割の利益率は難しいことではないと思える。

3/23日経「東電 収益向上描けず」 識者の見方から橘川武郎東京理科大教授
送配電や原子力発電での連携の話は具体性に乏しく、全体としての新味は全くなかった。東電HDsが福島県の復興と廃炉を実現する姿勢を示すのであれば、まず柏崎刈羽原子力発電所や火力発電所を売却すべきだ。そのうえで足りないものがあれば、国民にお願いすることになる。先に負担ありきの議論では国民の理解は得られない。

2015.9.7 22:18 産経
東電の送電網利用料、一般家庭で月額2558円相当 経産省
http://www.sankei.com/life/news/150907/lif1509070032-n1.html
経済産業省が7日開いた電力取引監視等委員会の専門会合で、東京電力は来年4月の電力小売り全面自由化に向け申請した送電網の使用料(託送料金)について、そのまま認可されれば一般的な家庭の電気料金(月額7982円)のうち2558円と3割程度を占める見通しだと明らかにした。
同日の専門会合では、東電など7電力の申請内容を審査した。一般的な家庭では、関西電力が月額8457円の電気料金のうち2586円、九州電力が同7423円のうち2610円など、他の大手電力も同様に3〜4割を託送料金が占めることになるという。