ARMとニケシュ

3兆円のディールに投資銀行に2%(600億円)の報酬を払っても、世間の人はそんなもんかと思う。ところが給与を160億円払うと高すぎると批判する。企業対企業の取引では市場価格があるからそれで妥当だと納得する一方で、給与だと妬みがあるのか高すぎるという個人的感覚が先立ってしまう。

今回のARM社買収で投資銀行は出てこない。こういうことではないか。
ニケシュは投資銀行の役割を果たした、と。そうであれば、ソフトバンクは400億円ほどの費用を節約した。7/20日経の孫社長へのインタビューで、7月はじめにARMの会長に面談して2週間ほどで決めたと語っているが、資金繰りについては昨年秋から手配したとも語る。水面下で半年以上の時間をかけている。買収で必須のデューデリは6月中に完了していたのだろう。資金の手当てもついた。そこで、孫社長はARMの会長と面談することになった。私の方は腹を決めました、と。

ニケシュが退任したのは一仕事終え、私のミッションは完了しましたということではないか。孫社長はこれまでの発言のつじつまを合わせるために、まだ社長を続けたくなったと世間を煙に巻いているのだろう。

日経はSBのビジネスが変わっていくようなことを予測しているが、当面は投資案件である。アリババみたいに大化けすることを期待して。
スマホ・ビジネスはキャッシュ・カウなのだから、よほどの好条件を提示する買い手が出ない限り、手放すことはないだろう。

(参考データ)
アリババ株、ガンホー株、スーパーセル株の売却で得る2兆円。3月末の手元資金2.5注円。
買収金額240億ポンド(3.3兆円)
6月頭に1000ペンス程度だったアーム株はじりじりと株価を上げ、7月には1200ペンス前後に値上がりしていた(現在は今回の買収予定価格である1700ペンスにはりついている)。
ソフトバンクが1株当たり現金17ポンドを支払う。これはARMの株価に約43%のプレミアムを上乗せした金額。
EPSの60倍ほど。

アーム社の売上高は2015年12月期9.6億ポンド、営業利益は4.0億ポンド。年間で148億個の半導体の設計に関わった。総資産21.2億ポンドに対して純資産17.9億ポンドと好財務の会社である。
売上 1,488.6£M EPS 30.2ペンス
ARM has performed strongly in 2015. Group dollar revenues increased by 15% and normalised diluted earnings per share by 25% to 30.2p (IFRS: 33% to 23.9p). The Board has recommended an increase in the full year dividend for 2015 of 25%, demonstrating the Board’s confidence in ARM’s long-term growth opportunities, and, during the year, approved the buyback of 9.0 million shares.