ソフトバンク:ARM買収はペイするのか

孫社長の予測(下記日経記事)では、今後20年でアームのチップは1兆個ばら撒かれると言う。2015の決算の数値をそのまま延長すると、1兆個では期待利益率の分が回収できそうにない。現状と同じ純利益率35.0%では株式評価額は350億ドル。買収金額は320億ドルでトントンである(計算過程は下記を参照)。

ところが利益率では大きな上昇を見込めそうである。年平均チップの出荷数は今より3倍と見込まれる一方、開発要員を2倍に増やすと約束しているのがポイントである。チップ当たりの人件費と開発費が減るので利益率は増える。純利益率が50%に上昇すると株式評価額は500億ドルになる。これなら大成功ではないがそこそこの成果である。

孫社長の目論見は達成できるのか。ARMのチップの出荷数とコスト構造がどうなるか、見ものである。

(計算過程)
2015年の実績をそのまま将来へ延ばすと仮定する。2015年の実績は売上高14.88億ドル、純利益率35.0%、出荷したチップ数148億個。チップ当たりの売上は$0.1/チップ、純利益は$0.035/チップとなる。

孫社長の予測どおりとすると、平均で年間500億個出荷、売上50億ドル/年、純利益17.5億ドル/年。20年間累計で売上1,000億ドル、純利益350億ドル。PER20倍とすれば、株式の時価総額350億ドル。
純利益率が50%になるとすると、年平均純利益は25億ドル。PER20倍で株式の時価総額は500億ドル。
買収金額は243億ポンド(320億ドル、3.3兆円)。アップルの時価総額は5,236億ドル。

日経:ソフトバンク孫社長「アームのチップ1兆個へ」
2016/7/21 11:20
ソフトバンクグループの孫正義社長は21日、都内で法人向けに開いたイベントで、買収を決めた英半導体設計大手のアーム・ホールディングスについて、「グループの中核になる」と述べた。今後20年で「アームのチップ(半導体)はばらまかれる。1兆個になるだろう」とさらなる普及に期待を示した。

(参考データ)

- FY2015
Revenue $M 1,488.6
Revenue(£m) 968.3
GM(£m) 929.0(95.9%)
Operating exps(£m) 522.9
Operating margin(£m) 406.1(41.9%)
Profit before tax (£m) 414.8
Tax(£m) 75.1
Net income(£m) 339.7(35.0%)
EPS (pence) 24.1
Chips 14,800M
Basic shares 1,407.4
Diluted shares 12.9
Total 1,420.3