信用創造のメカニズム

マイナス金利で貸し出しが増えるという魔法の呪文からそろそろ目を覚ます時だ。

ウィキでの信用創造の説明。
銀行が貸し出しを行う過程で信用創造は発生する。以下は、そのプロセスの一例である。
1. A銀行が、X社に1000円の貸し出しを行う。
2. X社の所有する預金口座に1000円が入金され、A銀行のバランスシートに資産1000円(貸付金)と負債1000円(預金)、X社のバランスシートに資産1000円(預金)と負債1000円(借入金)が同時に創造される。
3. A銀行は預金の増加に伴い、準備率にしたがって日銀当座に所定の準備預金を預け入れる。

これに補足すると、銀行は準備預金の原資がないので家計から預金を集めたり、コール市場から資金を調達する。銀行のBSは家計からの預金の場合、現金/預金となる。この現金を準備預金に預ける。
銀行は家計から預金を集めてそれを元手に貸し出しを行うという俗説は、一見それらしいが誤った説明である。

ここでの不都合な真実は、準備預金にはマイナス金利が適用され銀行は日銀に金利を支払う(これまではタダか0.1%もらえた)。他方、貸出金利はマイナス金利政策で低下圧力が強い。つまり銀行には貸し出しを増やそうとするインセンティブがない。それどころかマイナス金利が適用される準備預金を減らそうとすることになるので、信用は収縮する。

これに加えてマイナス金利が反転した時には国債に評価損が発生し、自己資本の棄損、貸し出しの収縮というプロセスが進む。

今の政策の最終ゴールは信用の大収縮になる。

7/15大機小機「日銀は方向転換できるか」(冬至)は佐藤健裕・日銀審議委員の発言を次のように紹介している。「金融機関は限界的な逆ざやリスクに直面している。逆ざや化はバランスシートの拡張ではなく圧縮が合理的な判断になる」と。
日銀審議委員から大銀行出身がいなくなったのは、日銀総裁を裸の王様化するプロセスのように見えてくる。