日銀マイナス金利の誤算

1/29に導入を決めたマイナス金利、最初の数日は円安、株高に向かい目的を達成するかに見えたが、その後は大幅な円高、株安になった。

- ドル・円 日経平均
1/28木 118.78 17,041
2/10水 114.88 15,713
変動幅 3.90円高(3.2%) 1,328円安(7.79%)

2/10日経は、「必要ならさらに下げる」(黒田日銀総裁)発言を引用し、更なる引き下げを予測する。しかし、現実の相場の動きやマイナス金利がこれまでの日銀のやってきたこととの整合性が取れていないことから、相場が落ち着きを取り戻し、日銀がマイナス金利の目的を再定義しないと再度の引き下げは難しいと思える。

日銀はこれまで量的緩和で日銀当座預金をどんどん積み増しさせてきた。それが予想インフレ率を上昇させ、民間の支出が増えると説明してきた。市場は、それに応え円安・株高のサイクルが昨年夏ごろまでは回っていた。

今回のマイナス金利は、当座預金残高の増加分にマイナス金利を課すので、これ以上は当座預金残高は増えなくなる。この結果、これまでの慣性が継続しているのであろう、円安・株高のサイクルが逆回転を始めたようである。

2/10日経・経済教室「マイナス金利の功罪・下」は「量的・質的緩和は金融機関の当座預金保有残高を増やす政策であり、これに課金するマイナス金利とは相性が悪い」と指摘している。マイナス金利の目的とは、「年初来の金融市場のかなり大きな変動、不安定さへの対応であることに照らすと、整合的な枠組み構築より、自国通貨預金のコストを高めることによる円安誘導、それを通じた株価安定に期待したいのが本音だろう」と喝破する。

マイナス金利を採用したのは、日銀に眠っている銀行の預け金を民間に回すためだった(2/10日経)とされるが、それだけを取り出すともっともらしく聞こえる。これまでやってきたこととの整合的な枠組みを作り上げることが日銀の政策への信頼を高めるために必要と思われる。

Think outside the box
2/6/16マイナス金利と「識者」の錯誤
http://totb.hatenablog.com/entry/2016/02/08/002130
そもそも、QQEは「超過準備(ブタ積み)を激増させる→企業や家計の予想インフレ率が上昇する→円安・資産価格上昇・支出増加が生じる」というメカニズムを想定しているものであり、「日銀が大量供給した銀行券が銀行を経由して市中に溢れてインフレ好況が生じる」というものではありません。