三菱自動車とJR北海道の共通するところ

不正燃費問題を企業体質の問題と診断するのは精神主義で問題の解決にはならない。それなら全社員が禅寺にこもって座禅すれば解決しそうだ。
不正燃費問題は企業体力の問題と捉えれば、解決策はある。

企業がジリ貧になると経費を削減して乗り切ろうとする。生産やサービスの提供を止めるわけにはいかないから、直ちに事業の展開に影響しないところからカットして事態の好転(売上の回復、調達コストの低減など)を待とうとする。

その良い例がJR北海道である。JR北海道は広大な路線を抱えていてその維持管理コストは膨大であった。しかるに広大な路線に見合う収入は得られていなかった。これでは会社はジリ貧で誰が見ても会社の存続は覚束ない。国営会社であるので、廃業とか事業売却など問題外であった。そこで削れる維持管理コストに手をつけ収支のつじつまを合わせようとした。その結果として、運行問題が頻発することになった。

JR北海道と同じ道筋をたどったのが三菱である。年産100万台の車メーカーにとって、試験研究費や開発費を負担するのは企業の能力を超えている。乏しい予算や人員を割り当てられた「性能実験部」には、数値をいじってつじつまを合わせるしかない(チャレンジを強要された東芝の事業部と同じ)。

これは経営の問題である。社会的に受け入れられる品質の車を提供するためにどれだけの研究費や開発費が必要なのかをはじき出し、それが身の程を超えているなら業務提携や身売りを考えなければならなかった。水面下ではそんな動きはあったのかもしれないが、表には出てこない。「性能実験部」はスケープゴートにされた気の毒な被害者である。

三菱グループの主要株主にも責任はある。経営支援で増資を引き受けた時、彼らは「出口戦略」を考えなかったのだろうか。永遠に自動車会社の株を持ち続けようとしたのだろうか。彼らの株主への説明責任をはたす。それが企業統治の本来のあり方。

日産にはお得な買い物だった。仮に当該軽自動車が販売開始から3年経過して、年60万台販売、1台当たりの補償額を10万円として、マックスの損失は1,800億円。三菱自動車の財務で十分に吸収可能である。
メリットは大きい。研究開発を三菱に使わせれば、研究開発費の1/6(年間生産台数:日産5百万台、三菱1百万台)は三菱が負担する(日産はその分負担を減らせる)ことになる(細かい持分比率は省略)。三菱は研究開発の負担から開放される。

なんとなく今回のハードランディングは仕組まれたようなシナリオでもあるようにも見えるけど、真相は分からない。