5/12日経文化欄「出雲古伝の酒に乾杯」

5/12日経文化欄「出雲古伝の酒に乾杯」「神話時代由来の一夜酒から小泉八雲の愛飲酒まで復元」酒類コンサルタント・堀江修二

出雲の成り立ちを酒を通して考察する興味深いエッセーである。以下はその抜粋。
・出雲の酒は中国北部の製法が用いられている。日本では通常中国南部の製法で作られる。
・出雲は、熊本、宮崎、鹿児島などと共通する酒造がある。

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スサノオ命がヤマタオロチを退治するために造った「ヤシオリノサケ」を作ったことが神話に伝えられている。

出雲大社須佐神社には祭礼のときに供える「一夜酒」がある。水に米を入れて粥を炊き、そこにでんぷんを糖に変える麹を入れる方法で作る。
古代中国では、こうしたまず粥を作る「ビレイ」の酒が古くからあり、中国北部で広がった。一方、今と同じく米などの穀類を蒸して水と麹を加える「フンレイ」の酒はビレイより新しく、長江流域を起源とする。

日本の殆どの神社の祭祀に供えられるのはフンレイの酒で、中国南部からBC600頃に伝わったとされる。

出雲大社須佐神社に残るビレイの酒は弥生中期後葉に、朝鮮半島北部から鉄鍛冶・墳丘墓文化と共に直接出雲に来たと堀江氏は推測する。

また、出雲地伝酒には大量の木灰を加えることにより弱アルカリ性になる。木灰を加えた酒は灰持酒と呼ばれ、熊本、宮崎、鹿児島で見られる。堀江氏は、5-6世紀に南九州と出雲には交流があったようなので、その頃に取り入れられたのではないかと推測する。