南シナ海で安保法制の適用が始まるのか

米軍から給油の要請があった場合、米中衝突になったとき武器・弾薬の供給を要請される場合、米軍が苦戦しているとき「はなれに火事が回ってくるので」支援に駆けつける場合など、現実の問題として安保法制が発動されそうである。

安保法制の施行は来年3月までであるが、それほどに時間の余裕はあるわけではない。国会では具体的運用を討議するのだろうか。安倍政権はどんな準備をしているのだろうか。

10/27産経:自衛隊どう関与 新法制で「日米共同パトロール」構想も
http://www.sankei.com/politics/news/151027/plt1510270067-n1.html
9月に成立した新たな安全保障関連法制は、自衛隊と米軍の連携の幅を大きく広げるもので、今回の米艦航行で緊張が高まる南シナ海における日米の共同作戦行動も視野に入れている。新法制の下で自衛隊南シナ海で活動するとすれば何が想定され、何が可能になっているのか。(千葉倫之)

 米側には、南シナ海での対中抑止に日本も加わることへの期待が強い。1月には米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を拠点とする第7艦隊の当時の司令官が「将来的に自衛隊南シナ海で活動することは理にかなう」とも言及した。

 具体的に想定されるのは、自衛隊と米軍による平時の共同警戒監視活動(パトロール)だ。海上自衛隊の艦船が米艦と「共同演習」として南シナ海を遊弋(ゆうよく)したり、P3C哨戒機などが空から監視活動したりすることが挙げられる。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は27日の記者会見で、共同パトロール構想について「そうした作戦に参加する計画はない」と現時点での可能性を否定したが、日本側にも「南シナ海は重要なシーレーン海上交通路)で、航行の安全確保は人ごとではない」(元海自幹部)と積極論がある。オーストラリアを加えた枠組みでの実現を目指す構想も語られる。

 共同パトロールが実現すれば、新法制で可能になった「平時の米艦防護」が適用される見込みだ。従来、自衛隊は演習などで米艦と共同行動中でも自己防護しかできなかったが、新法制は米艦を攻撃から守るための武器使用を制約付きながら認めた。「互いに守り合う」ことで、より実効的な警戒監視が可能になる。

 万一、南シナ海で米中の武力衝突が発生し、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」などの要件を満たせば、政府は「重要影響事態」に認定し、米軍などへの後方支援が可能になる。旧周辺事態法下では南シナ海有事に日本が関与できるかはあいまいだったが、安倍晋三首相は南シナ海も重要影響事態の認定範囲に含まれるとの考えを示している。

ただ、南シナ海への関与強化には課題も多い。平時の米艦防護など、新法制に応じた自衛隊の部隊行動基準(ROE)の整備などは今後の課題で「日本は東シナ海で手いっぱい」(政府高官)との意見もある。中谷元・防衛相は27日、「南シナ海の状況にどう対応していくか、今後とも十分に検討を行うべき課題だ」と述べるにとどめた。