安保法制 安倍首相の拙い説明

5/16日経「自民・谷垣幹事長に聞く」

(国民の間で)まだ理解が進んでいないから丁寧に議論せよという声はわが党の中でも強い。

谷垣幹事長の心配はご尤もだが、幹事長の立場上、理解が進んでいるから反対が多いとは言えないのだろう。仮に理解が進んでないとしても、その元凶は安倍首相の拙い説明なのではないか。

5/14の記者会見では次のように説明していた。
① 戦後日本は平和国家としての道をまっすぐに歩んできた。世界でも高く評価されている。これまでの歩みに私たちは胸を張るべきだ。
② もはや一国のみでどの国も自国の安全を守ることは出来ない。
③ 同時に万が一のときの備えも怠ってはいけない。日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれる。米軍が攻撃を受けても私たちは日本への攻撃がなければ何もできない。本当にそれでよいのか。日本近海で米軍が攻撃される状況は私たちにも危険が及びかねない。他人事ではなくまさに私たち自身の危機だ。

①は戦後70年の平和の歩みへの評価であり、安倍首相自身も高く評価している。
②は現状の分析であり、多くの人は同意するだろう。
③はいきなり飛躍して、論理が破綻する。国民の理解できないところである。

①と②が肯定的であれば、これからの安全保障はその延長線上に強化・充実すべきものであろう。ところが、安倍首相は①と②は御破算にして、唐突に米軍支援を唱える。それも日本近海である。それが法案では活動範囲がホルムズ海峡や地球の裏側までに広がる。一言で言えば、この説明は説明になっていない。

これでは、戦争をしたいという意欲だけが前面に出て、そのことを国民が理解しているとすれば安倍政権は謙虚に受け止めるべきであるし、国民の理解が足りないとしたら安倍首相の拙いレトリックを正すことからやり直さなければならない。

例えばこのような表現ではどうだろうか。
① 戦後の平和は安保条約によって保たれた。
② 近年アジアでのパワーバランスが揺らいできて、日本にも積極的な関与が要請されている。
③ これまでの方針を転換して、アジアではアメリカ及びその同盟国への支援を行う。

ここでも、ホルムズ海峡や地球の裏側まで行くのは無理のように思える。それは次のステップで考えることであろう。