自動運転の社会 トヨタがグーグルの下請けになる日

車の自動運転化が進むとどのような社会になるのか。雇用やGDPにはどのような変化が出てくるのか。

10/21日経「ホンダ、20年に自動運転」「国内大手3社、世界で先行目指す」
トヨタとホンダは20年に高速道路での車線変更などが可能な車を投入する。日産は、16年に高速道路の一定の車線限定の車を日本で発売する。20年には市街地の一般道対応車も。
GMは17年に高速での自動運転機能を搭載したキャデラックをアメリカと中国で発売する。
グーグルは、ハンドルやブレーキのないプロトタイプの公道試験を実施。17年にも出荷を開始。

GMやグーグルが先行しているように見えるが、日本勢は追いつけるのか。

日経は自動運転の利点を「渋滞や事故を減らす」と指摘しているが、それは些細な利点で社会的な有益性は殆どない。事業者が飛びつくメリットは無人運転化で運転手の人件費を大幅に減らす(無くす)ことである。無人化ができれば車の取得費が多少上がっても運送事業者は飛びつくだろう。

運転手には脅威だが、すぐに無人化が実現するとも思えない。最初は、高速などの優先レーンで無人化走行を行い、市街地との接続ポイントで人間の運転に切り替えることから始まるのではないか。産地と消費地の輸送が無人化されれば長距離輸送の運転業務が消滅する。当事者には大変な問題だが、労働人口減少時代にあっては救世主かもしれない。無人化対応自動車の製造業者にとっても高収益が見込める。

無人化が進むと、優位性のあるのは地図情報を持つグーグルだ。地図情報を含む頭脳部分をグーグルが独占し、トヨタは下請けとして(ライセンス利用者として)車の量産を行うという棲み分けがあるのかもしれない。付加価値の大きな部分はグーグルが独り占めする。国内大手3社が開発を急ぐのは無理からぬところである。

車の技術革新は無人化とガソリンエンジンに磨きをかけることが中心になりそうだ。ジーゼルはVWの失策で、少なくとも大衆車レベルでは経済性がないことがハッキリした。ガソリン価格は、10/20−22日経経済教室「長期化する原油安」で指摘しているように、これから数年は低迷しそうである。FCVやEVが浸透するのは先のことになりそうだ。安いガソリンで走らせる車が主流である。経済性を重んじない技術的可能性だけを夢見るのは良策とはいえない。


参考資料:
平成26年3月3日 労働力不足問題について 国土交通省総合政策局物流政策課」

  • 平均年収 3.5百万円
  • 車両台数と運転者数の関係について質問した項目に対しては、「車両台数の1.2倍以上の運転者がいる」とした回答が42.2%の12年6月調査比10.7ポイント減、「車両台数と同数の運転者がいる」が39.3%の8.4ポイント増、「車両台

数より運転者の数が少ない」との回答も18.6%の2.3ポイント増となった。
(輸送新聞 平成26年1月20日(月))

平成22年度版 トラック輸送産業の現状と課題 全日本トラック協会

  • 平成21年度末のトラック保有台数(軽自動車を除く)は、営業用が136.1万台、自家用が651.3万台である。
  • 運転者数をみると18年度に91万8,166人となっており、15年度以降増加傾向にある。
  • トラック運送事業の営業収入は、平成5年度の12兆2,879億円をピークに13年度の11兆754億円まで減少を続けた。しかし、14年度以降、増加傾向に転じ、18年度は対前年度比5.1%増の14兆2,989億円となった。

人件費総額は、運転手への支払い給与から3.5百万円×918.166千人=3.2兆円
トラック情報サイト[トラックNEXT]
トラック販売台数 14年(1−12月)普通貨物車 164千台
無人化対応トラックの価格が1百万円アップするとすれば、
1百万円×164千台=1,640億円 の収益増加。