安倍首相の混乱:東シナ海の中国ガス田開発を安保法制の理由にする

外務省は7月22日、ガス田開発に使う海洋プラットフォームを中国が東シナ海に新設しているとして、証拠の航空写真を公開した(下記、The Huffington Postの記事)。プラットフォーム建設をめぐっては、中谷元(げん)防衛相が10日の衆院平和安全法制特別委員会で「(中国が)安全保障の観点から利用する可能性は考えられる」と述べ、レーダー施設の設置など軍事拠点化される懸念を示している(産経新聞 7月23日(木)7時55分配信)。

これまでは外交交渉に支障を来すと公表を避けてきた面がある。公表に踏み切った背景には、世論の支持が低迷している安全保障関連法案の審議を後押しする思惑もちらつく、と評されている。

だが、政府の説明は無理筋というものである。
政府の説明は、安保法制案の内容に対する国民の理解を深め、反対する意見を増やすことになる。
安倍氏には筋道立てて国民を説得する力がないのか、それともこの程度の話題しか説得する材料が無いということなのであろう。

商業施設を軍事転用される可能性があると防衛相は述べる。だが、軍事施設に転用される証拠を示さずに商業施設を軍事転用されると主張するのは、安倍氏周辺では共有される見方かもしれないが、客観性の無い妄言である。かって、秦の暴臣・趙高は鹿を馬だと言いくるめようとしたが、これに類する戯言である。
これらの施設は(日本政府が主張する)日中中間線の中国側にある。日本が主張する中国側の領海に商業施設を建設することは、外形上は日本にはクレームをつける理由は無い。
これらは外交によって解決すべき問題を軍事で解決しようとする意思が透けて見える。かえって世界中に安倍首相の戦争をしたいという希望を知らしめることになるだろう。中国側の思う壺である。

しかも、東シナ海の防衛は、日米安保で担保されている。昨年のオバマ大統領来日でそのことは明言された(下記、産経記事)。日本外交の大きな成果とされている。もしこの文脈で中国との対立緊張化を解するとすれば、安保5条のアメリカの責務を果たしてもらうために、その対価として日本はアメリカにホルムズ海峡までは(集団的自衛や後方支援で)協力しますという密約があったと推測される。もしそうならば、それを隠してひたすら安保法制案を通そうとする安倍首相には誠実さが見られない。

4/24/14 産経
オバマ氏「尖閣日米安保の適用対象」明言 TPPは閣僚協議継続へ
http://www.sankei.com/politics/news/140424/plt1404240033-n1.html

両首脳は中国の「力による現状変更」に明確に反対することで一致。オバマ氏は共同会見で、「尖閣は(米国の日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言した。

東シナ海の中国ガス田、政府が16施設の証拠写真を公開
http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/22/east-china-sea-gas-filed_n_7846954.html
The Huffington Post | 執筆者: 安藤健二
投稿日: 2015年07月23日 10時59分 JST
外務省は7月22日、ガス田開発に使う海洋プラットフォームを中国が東シナ海に新設しているとして、証拠の航空写真を公開した。2008年に日中両政府で発表した共同開発の基本合意を中国が反故(ほご)にして一方的に資源開発を進めたことや、海洋プラットフォームが軍事拠点として活用される恐れがあることから公表に踏み切ったという。

東シナ海のガス田開発を巡っては、2008年に日中両政府が共同開発することで合意し、条約の締結交渉も行われたが、2010年に尖閣諸島沖の中国漁船による衝突事件が起きたことで、中断した。こうしたなかで、政府は、中国が東シナ海でこれまでに確認していた4基に加えて2013年6月以降に12基の新たな構造物を建設していることを確認したという。これらの施設は、いずれも日本と中国の中間線の中国側にあった。

NHKニュースによると、菅官房長官は会見で「東シナ海における日中間の排他的経済水域および大陸棚の境界は未画定であり、日本は、日中中間線をもとに境界画定を行うべきであるという立場だ。いまだ境界が画定されていない状況で、日中中間線の中国側においてとはいえ、中国が一方的に資源開発を進めることは極めて遺憾だ」と述べたという。

中国のガス田開発をめぐっては、21日に発表された2015年度版の防衛白書でも、「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、わが国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止などを求めている」と記していた。