ソフトバンク:ニケシュ・アローラの役員報酬をキャピタルゲインに置き換える節税テクニック

アローラ氏から見ると本取引の損得はどうなるか。
600億円を投じると、約8百万株を所有することになる。

(1)一株配当は40円であるから、毎年320百万円の配当収入がある。分離課税で、約20%で課税される。
(2)アローラ氏の経営が成功し、時価総額が2倍になったとすると、600億円のキャピタルゲインを得ることができる。分離課税で、約20%で課税される。
(3)アローラ氏の役員報酬が年60億円で、10年間社長を務めるとすると、総収入は600億円で、総合課税で、約50%を納税することになる。


アローラ氏にとって、(1)+(2)の組み合わせか(3)の報酬を選択させると、(1)+(2)は実現しないリスクはあるものの次のような損得計算が頭に浮かぶ。
(1)と(2)とを合算すると、税額は3.2億円×10年×20%+600億円×20%=126.4億円
(3)の納税総額は300億円で、(1)+(2)よりも174億円も多い。


アローラ氏の役員報酬は、本年の株主総会役員報酬枠が増額されなかったので、それほど多くはないのではないか。その推測が当たっているとすれば、その背後には役員報酬を配当とキャピタルゲインに置き換えるという税テクニックがあるのである。
目立たない役員報酬にしておけば、メディアに騒がれることもない。


アメリカでも雇用所得とキャピタルゲインの置き換えが少し前から問題になっている。冗談のようだが、バッフェット氏の税率が秘書のそれより低いという話もある。
二元的所得課税という話題が最近取り上げられることがあるが、お金持ちに有利な税制であることを承知しておくべきである。


ガラス張りのサラリーマンと違って、お金持ちには工夫次第で色々と節税を仕組めるということである。これでは、1%や0.1%との格差は広がる一方である。

(1)上場株式譲渡益 分離課税 20%(所得税15%、住民税5%) 復興特別所得税(平成49年、2037年まで) 基準所得税額に2.1%を掛けて計算
(2)上場株式配当 分離課税 20%(所得税及び15%、地方税5%)復興特別所得税 基準所得税額に2.1%を掛けて計算
(3)給与所得 総合課税 最高税率 所得税 45%、地方税 10%、復興特別所得税 基準所得税額に2.1%を掛けて計算