安倍首相の対中国抑止論は現実的か

最近になって安倍政権は、安保法制の必要性と緊急性を中国の海洋進出を理由に掲げるようになった。それを阻止するために、抑止力が必要であると。

日米中の経済力から見ると、安倍首相の唱える中国に対する抑止力を高めるという構想は殆ど実現性がないどころか、それ自体よって国を滅ばしてしまうかもしれない。

2014年の名目GDPをベースに10年後のGDPを計算する(単位:兆ドル)。2024年の()内は、10年間の予想平均成長率。

- 2014年名目GDP 2024年、最悪 2024年、中位 2024年、最良
日本 4.769 4.769(0%) 5.320(1%) 5.813(2%)
アメリ 17.416 19.429(1%) 21.230(2%) 23.406(3%)
中国 10.355 13.916(3%) 16.867(5%) 20.370(7%)

10年後には中国のGDPは、日本の3倍ほど、日本が経済運営を間違うと4倍以上に広がる。
今いくら抑止力を唱えていても、軍事支出には限度はあるはずで、それを考えないとイソップ物語のカエルのように、お腹をどんどん膨らませて最後にパーンと破裂させてしまうことになる。

アメリカは、日中で埋められない差がついた場合には、中国とどのように協調するかに外交スタンスを変えてしまうだろう。そうなると、日本はアメリカとの軍事支援を期待できなくなる。

安倍首相は、それ故、今しか中国をたたくことはできないと考えているなら、まれに見る好戦論者である。抑止論が機能するには、日本が最良の経済成長を遂げつつ、中国は最悪の経済成長を果たすということが条件になる。だが、隣国の繁栄を望まないというのは、歪んだ心というしかない。

抑止力が働かない場合のプランBは、用意されているのだろうか。もしそれがないのなら、戦前の指導者と同じように国を無謀の方向へ導くといわざるを得ない。