東芝の名誉回復は今からでも遅くない。委員会設置会社の機能を働かせれば問題は解決できる。

東芝委員会設置会社に移行していた。事象だけを追うと何がおかしかったのか迷路に入りそうになるけれど、委員会設置会社として何をすべきであったか、特に監査委員会、指名委員会、報酬委員会の働きを検討することによって見えてくるものがある。
7/28日経「迫真」、「墜ちた東芝」が大いに参考になった。

東芝委員会設置会社であれば、重要な局面ごとに各委員会にはどのように対応すべきだったのだろうか。下記の1と2は既に過去形であるが、3から5は現在進行中か今後確定する事項である。つまり東芝は失われた名誉をいくらかでも回復する余地があるのである。何が問題であったのかと悩んでいては時間を空費するだけで事は進展しない。
Better late than never という諺もあるではないか。

1. 問題発覚
2. 調査委員会設置から第三者委員会報告書
3. 現取締役と現執行役の辞任
4. 新取締役と新執行役の選任
5. 取締役及び執行役(辞任及び留任の両方)への報酬


1. (2月12日)証券取引等監視委員会が検査を開始した(下記、引用記事を参照)。この時点で取締役会に報告するかは、会社によって様々であろう。

2. (1)(4月3日)東芝は「特別調査委員会(以下、「調査委員会」)」を立ち上げた。委員長は会長である室町正志である。東芝の定款は取締役会長が取締役会議長になると定めており、現在は生え抜きの室町正志会長が議長を務めている(代表執行役を兼ねる)。室町氏は、代表執行役を兼ねているから執行側の人間である。
「調査委員会」の設置は取締役会に報告され、日経は、取締役会で「危機管理の対策委員会を設けるべきだ。責任者を置いて、外部の専門家を雇ったほうが良い」と言う意見が出たと伝える。
監査委員会は、これに特段の対応はしていなかったようだ。対応が遅い、鈍いという批判あるかもしれないが、執行側の対応を対応を見守るものであり、監査委員会が任務を怠っていたとまでは言えない。
なお、4月になってこの動きが出てきたのは(東芝株の保有先の株価下落による)3月末の決算への影響を回避しようとしたことが疑われるが、明らかにされていない。

(2)(5月8日)日経によれば「調査委員会」の報告からトップの関与が疑われることになり、室町会長は5月になって第三者委員会を設置することを決意する。5/8に第三者委員会の設置や決算発表の延期を発表する。
遅くとも取締役会はこの時点で監査委員会が第三者委員会を主導することを決定しなければならなかった。ここから委員会設置会社としての東芝は道筋から外れて行くことになる。

(3)(7月20日)第三者委員会報告書が公表される。第三者委員会の報告書の宛名は、「株式会社東芝 御中」となっていた。室町会長の要請により「報告書」が作成されたのであるが、宛名には社名しか示されていない。法的にどのような意味があるのかは判らない。

3. 「報告書」公表後、自発的に取締役と執行役の多くが辞任を表明した。本来は監査委員会の調査に基づき、指名委員会で取締役と執行役の辞任か留任を決めるべきものである。

4. 新たな取締役のメンバーや新社長が報じられるが、どこからそのような情報が出てくるのか。取締役会や指名委員会の候補に挙げられたのであれば理解できるのであるが、裏で糸を引く「実力者」が動いているとすれば、東芝は指名委員会を理解していないとしか言いようが無い。

5. 退任する取締役と執行役の退職慰労金は、報酬委員会で決するものである。自発的に辞任したから規約どおりに支払われるというのでは、規律が保たれない。留任する取締役と執行役についても、不正会計に関与していれば報酬委員会で減給等の処分が決められるものである。

このように委員会設置会社の機能を教科書通りに働かせれば、結構大きな仕事をすることが出来るのである。そのことが、将来に向けた抑止力にもなろう。事前に不正会計を防止するという幻想は抱かないほうが良い。他の委員会設置会社にとっても有意義な事例を提供することができる。委員会設置会社を選んだ会社の社長は、社長が第三者にクビを切られたり給与を決められるのに耐えられないと不満を持つかもしれない。しかし、それを選んだのは当の社長である。それだけの覚悟か無く安易に決めてしまった(株主に迎合した)と言うしかない。それがいやなら、監査役会設置会社に戻ればよい。

47NEWS 7/21【東芝・不適切会計問題】「企業統治の優等生」のずさんな実態 端緒は内部告発 危機感乏しくダメージ拡大
http://www.47news.jp/47topics/e/267277.php
▽端緒
 全ての始まりは1通のメールだった。「東芝のインフラ関連事業の会計処理に不正行為があった」。昨年、証券取引等監視委員会に届いたメールの差出人は、東芝の関係者だった。社員などが実名で通報する「公益通報制度」が活用され、内容は信ぴょう性があった。
 監視委は昨年12月に検査開始を決定。情報収集を進め、ことし2月、検査に着手した。最初に着目した原発事業では数十億円規模の利益水増しが疑われた。
 しかし、東芝経営陣の動きは鈍かった。社内の調査委員会を設置したのは、検査が入った約2カ月後の4月。社内調査では利益の水増し額が500億円余りとされた。田中久雄社長は5月下旬の記者会見で、社内調査で判明した以外に「大きな懸念は発見されていない」と強調していた。