経産省の時代錯誤:「最低でも液晶技術の海外流出を食い止めたい」

国家主義者には共感されるかもしれないが、「最低でも液晶技術の海外流出を食い止めたい」(下記日経記事から引用)は時代錯誤の意識そのものである。

株主や債権者にとって関心のあるのは、シャープの技術が適正に評価されそれが株価や企業価値に反映されているかである。出来得れば過大評価されて株主や債権者がメリットを得られればもっと良い。

シャープの技術力の評価は二通りにわかれよう。
1. 株式市場の評価が正しいとすると、プラスのキャッシュ・フローを生み出せる。この場合、リスク・プレミアムは大幅に上がっているので、割引率は大きくなる。たとえば割引率を30%、株価を160円とすると、ここから逆算して割引前の将来キャッシュ・フローの合計は一株当たり517円になる(技術の賞味期限を10年、キャッシュ・フローは毎年定額、他には計算に与える条件は無いと仮定)。強力なスポンサーが登場してリスク・プレミアムが低下すると、株価は大幅に上昇し、既存の株主、債権者、スポンサーは大きな利益を得る。既存株主が切り捨てられないかはスポンサー次第である。
短期借入金6,815億円、社債600億円、長期借入金2.294億円、合計9,709億円の返済は別途考慮する必要がある。
 (注)液晶事業の外部顧客向け売上高 7,729億円

2. 株式市場の評価は希望的観測で、実際に評価したら殆ど無価値であった。これは説得力のある見解である。なぜなら、技術力が優れていたらここまで業績が落ち込むことはなかったであろうから。それに対する反論は、良い技術をもっているが経営陣がそれを使いこなせなかった。これも納得させられる。

シャープに技術力があるとして、早急に手を打たなければならないのは、技術力を持ったスポンサーを見つけることだ。この際、海外に流出などとけちなことにこだわっては駄目だ。これまで2年近くを空費して事業価値は半分になった。後2年を空しく費やせば、事業価値はゼロになるだろう。良くないのは、経産省産業革新機構へ身売りすることだ。機構はすでにジャパン・ディスプレーに出資していて、シャープの液晶事業とは利益相反になる。しかも、機構には技術力や経営力があるかの疑問もある。

5/20日経は、ホンハイと日本電産の連合がシャープ買収に進むかもしれない事を示唆する。正しい方向だと思う。

5/20日経「危機のシャープ」「経産省 秘密会議の思惑」秘密会議とは経産省が主催した日本の電機産業の先行きを議論する1/16の会議。
経産省は)最低でも液晶技術の海外流出を食い止めたい。
また、ホンハイ、日本電産の関係を次のように伝える。
ホンハイ会長の郭台銘(テリー・ゴウ)は、2/15に永守重信と片山幹雄に案内され、日本電産川崎市にある基礎技術研究所を訪問し、片山に言った。「片山さん、私がシャープを買収したらあなたを社長にするよ」と。