大阪都構想の結論は拙速より巧遅がベター

大阪都構想は僅差で否決された。
私は大阪とは無縁の人間だが、大阪都構想には拙速な面が否定できない。
議論がまだ生煮えで拙速に決めてしまうよりは否決されて冷静に考え直すのは良かった。

1. 二重行政の是正か実利か
二重行政の是正は建前としてのスローガンだが、同時に維新にとって実利のある仕組みである。どういう実利があるかあまり報道されることがなかった。実利を抜きにして、維新の主張をそのまま鵜呑みにすることは出なかった。何しろ、最近は政治家の発言に懐疑的になっているので。

大阪都知事になれば、権限が大きくなる(大阪府+大阪市)だけでなく、既成政党の間で築かれて来た大阪市の利権構造も御破算になるのだろう。その後を維新が埋める。

例えば中日新聞の社説は利権の組み換えのようなことをチラリと示している。

5/18 中日新聞社
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015051802000112.html
議会を軽視して強引に住民投票に持ち込み、「納税者をナメた役所や議会をつぶす」「既得権益を全部壊す」などとあおって主張を押し通そうとした手法は、あまりにも危うい。

2. 大阪府民の参加
今回の投票から大阪市民でない大阪府民は疎外された。直ちに影響を受けるのは大阪市民であるが、大阪府民も税の配分や行政サービスの面で影響を受けるのは間違いない。大阪都知事は、支持してくれた大阪市民に税や行政サービスを厚く配分するバイアスがかかるだろう。
大阪府民をこの決定から疎外するのは、その方が都構想が成立しやすいという打算からではないか。今後も二重行政の是正を大義名分として、この種の投票があるかもしれないが、ここで投票権者の範囲を冷静に考えておくべきではないか。

それにしても安倍首相は前日に高野山などを巡り、この結果を見守っていたのだろう。橋下氏を支援するという無言のメッセージを送るために。