首相の解散権はどこまで認められるか 

12/19日経経済教室「衆院選 政権信任後の課題、下」野中尚人・学習院大学教授が近年の各国の動向を紹介する。日本は先進国とはいえそうもない。

「しかし欧州の主要先進国では、極端な政治的かけ引きを避けるため、近年は解散という制度自体をほとんど使えないようにしている。」

ブリュッセルの政治動向分析というサイトでは、「カナダの有権者は早期解散を決めた首相にバツを与えたか?(投稿日: 2014年12月6日)」で早期解散が許される国々を紹介している。
今の動きの中で近い将来とり残されるのは、日本とデンマークしかない。
http://toshihiko-ogushi.com/
世界的に見ても、首相が自由に早期解散できる先進国はそれほど多くない。カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、デンマーク、日本くらいでむしろ少数派である。下記の表は、議会の任期の固定度を表したものである(セミ固定に分類された国では、不信任決議等が出されるなど一定の条件を満たした上で早期選挙が可能となる)。
(表は省略)
また、任期固定のない国でも、ニュージーランド、オーストラリアでは固定化に向けた審議が進められており、カナダでも州では固定化を採用するところが増えている[4]。また、英国も少し前までこのグループに属していたが、2011年に「議会任期固定法」[5]を制定することで、首相による「伝家の宝刀」を実質制限することとなった。

カナダ人の政治学者で市民教育の専門家でもあるヘンリー•ミルナーは、議会任期を固定化することにより、首相の恣意性の制限、全体の選挙関連予算の削減だけでなく、準備期間の確保による政策議論、若者を含めた市民討議の充実による投票率向上に繋がると主張している。もちろん、解散権の制限によるマイナス点もあるが(ex ねじれ状態の宙づり化、選挙キャンペーンの長期化)、全体的には良い影響の方が大きいだろう。

最後に改めてまとめると、政治とは武器を使わない戦争であり、政治家は勝つためなら手段を選ばない生き物である。だからこそ今回の事例を教訓として、恣意的な早期解散を制限できるようなルールを作っていかなければならない、と思うのである。