企業献金:社外取締役はどう判断するか

経団連自民党への政治献金を再開するようだが、今話題となっている企業統治の面から政治献金はどのように取り扱われるのか。


経済学者である社外取締役
今日の大機小機「健全な資本主義と献金の矛盾」カトー氏。「経団連は健全な政党を支援するのは社会貢献であるという。それよりも経団連には健全な資本主義を維持することを期待したい」と述べている。経済学の観点からは政治献金は正当化するのは難しい。


弁護士である社外取締役
政治献金は会社の目的の範囲内であるか。これについては、「S45.06.24 大法廷・判決 昭和41(オ)444 取締役の責任追及請求(第24巻6号625頁) 八幡製鉄政治献金事件」という判例がある。

その要旨は次の通りで、基本的には容認される。

判示事項:
一、政治資金の寄附と会社の権利能力
二、会社の政党に対する政治資金の寄附の自由と憲法三章
三、商法二五四条ノ二の趣旨
四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附する場合と取締役の忠実義務

要旨:
一、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。
二、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する。
三、商法二五四条ノ二の規定は、同法二五四条三項、民法六四四条に定める善管義務をふえんし、かつ、一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものではない。
四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附することは、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてなされるかぎり、取締役の忠実義務に違反するものではない。


会計学者である社外取締役
配当の原資を政治献金に流用するのは、株主利益をないがしろにするものである。ただし、賄賂ではないという条件付で政治献金に対価性があって会社の利益を増やすものであれば容認できる。


政治献金は各社夫々が判断すべきもので、経団連が会員各社に献金を促すのは企業統治上の原則を逸脱するもののようだ。