機能しない取締役会 仏作って魂入れず

改正会社法では、いわゆるcomply or explain原則を導入し、独立社外取締役の選任について、選任しない場合、「相当の理由の説明」を求めることになった。

この制度に実効性はあるのか、そして日本の上場企業に根付くのか。
その回答は、独立取締役の選任が広まるが統治の実態は変わらないだろう、であろう。


その例として、10/15日経「会社研究、ソニー」、「社外の警鐘、経営に響かず」が示している。


取締役12人のうち社外取締役は9人を占める。多くの企業が社外取締役の導入を巡り議論する中で、ソニーははるか先を行く。それなのに結果に結びつかない。


「それなのに結果に結びつかない」と日経は問いかけるだけで答えを示さないばかりか、読者を誤解させるような誘導を行っている。


経営側が社外の知恵を生かせていないという説明が、実態に近い。


日経の見方の背景にあるのは、社長を中心とする経営体制があり、社外取締役は経営への助言をする役割であるという日本企業のこれまでのあり方である。

欧米風の統治システムを導入するならその精神を汲み取るべきであるが、どうも形だけは整えお茶を濁すというこれまでによくある改革になりそうである。

社外取締役に期待される役割は、「株主の番犬」になることである。そもそも取締役の役割は株主の代理人として経営陣を監視することにあるのだが、社内取締役では監視の役割が緩くなるので、経営陣と距離をおく社外取締役制度が導入された。取締役は、株主の利益と長期的な会社の利益が相反する時は、ちゅうちょなく株主の利益を選択する偏った存在である。例えば買収対象会社になったとき、欧米では取締役会は買収価格だけを議論する。高ければ買収に合意し、安ければ反対する。会社の長期的発展などは考慮されることはない。

多くの改革がそうであるように、形は真似したが、その精神は置き去りにされ日本風に換骨奪胎されるというのが社外取締役論の行き着く先であろう。


ところで10/16日経・会社研究「ソニー、下」は、「赤字の理由を突き詰めれば、ヒット商品の不在に尽きる」とあるが、この分析は皮相的ではないか。ヒットがなくてもやっていける基礎体力をつけることが先決だ。そうでないと、ヒットが出る前に事業が消滅してしまう。
また、「ソニーが手本にする企業」は「シャオミを見習え」であるが、あまりに弱気すぎる。シャオミを蹴散らせを合言葉にしたらどうなの。

RIETI (独法)経済産業研究所
企業統治改革の視点
宮島 英昭
http://www.rieti.go.jp/jp/special/special_report/077.html

近年の企業統治改革のもう1つの柱は、独立社外取締役の選任促進を中心とする取締役会改革である。今回成立した改正会社法では、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインの原則を導入し、独立社外取締役の選任について、選任しない場合、「相当の理由の説明」を求めた。このように独立性の高い機関の設置を促進することによって、いぜん内部者の利害が優位な日本企業の統治上の問題の解決を図ることが期待されている。