社会保険と財政を丼勘定にする理由

7/14日経社説「年金・医療と財政どう立て直すのか」
この議論は真面目な議論に見えて、実は大事なポイントを曖昧にしている。

社会保険と財政は異なる計算原理で収支が計算される。
1. 社会保険は保険料と保険給付の額を計算した上で、制度の持続可能性が測定される。
2. 財政は社会保険とは別物で、社会保険に政治上の配慮から一定額が仕送りされるとしても、それは財政のまかなえる範囲の金額であるのが原則である。


1のネットの収支(赤字の絶対額)>2の支援額の場合、改善策の本筋は保険料の引き上げか給付の削減、あるいはその両方の組み合わせになる。ところが日経社説のように社会保険と財政を合体させて議論を進めると、財政が限りなく社会保険の収支を補填するという話になって、どうやって税収増を図るか給付を削減するかという方向へ向かい、保険料をどうするかという議論はかすんでくる。それが日経の社説に現れている。

企業はこれ以上の社会保険料の負担には耐えられないので、社会保険料の一定部分は受益者である勤労者が負担するような仕組みに切り替えて欲しいという要望が反映されているようにも見える。消費増税の本当の狙いは、社会保険制度の税金化への切り替えなのかもしれない。

そうであれば、日経の社会保険料の引き上げに消極的(社会保険料の引き上げは社説の末尾に一言だけ述べられる)、消費増税へ積極的な立場は理解できないこともない。もしそのような方向を目指しているのなら法人減税を唱えるのは道理に合わないし、企業を甘やかしているだけだと評されるよう。まさか、法人は病気にならないし年金をもらうこともないなんて思っているのではないよね。