日経が報じるグーグルの税負担と社説の主張

6/30日経「企業と国 奪い合う富」「国境またぐ節税拡大」
この記事の狙いはグーグルの税負担が、「実際、税引き前の利益に対する法人税の負担割合を示す税負担率で見ると、グーグルは19%、米国の法人実効税率(約40%)を大きく下回る」ことを知らせるためのものである。


読者にこれでは日本企業は勝てないと思わせて、社説「本丸の法人税率の引き下げを忘れるな」に誘導しているように見える。社説にいわく、「期待したいのは国税地方税を合わせた法人実効税率の引き下げだ。日本の税率は12年度に40%強から35%強(復興増税を含めると12−14年度は約38%)に下がったものの、国際標準といわれる25%−30%よりもまだ高い」と指摘し、「1%の実効税率の引き下げは国と地方で3,000億―4,000億円の減収につながる」ものの、「しかし法人税の課税ベースの拡大や他の税目の増税と合わせて実施してきたドイツや英国などに学ぶこともできるのではないか」と主張する。他の税目の増税とは言うまでもなく消費増税であろう。

なるほど、日本企業の税負担率がグーグル並みの19%になれば国内の雇用や投資が増え、多くの外資企業が日本に進出するかもしれないというストーリーは、表面上は米実効税率が日本以上に高いのにアップルやグーグルなどの成長企業が次々と登場する「秘密」を解明しているかのようだ。

だが、一面のグーグル19%説は、グーグルが税を逃れている利益は海外の子会社の利益であることを無視した課税のメカニズムを誤解しているかそうでなければ意図的に読者を誘導するたちの悪い記事である。米国内で稼いだ利益には40%強の税が課せられている事を故意に無視している。

日経の主張が日本企業も海外の利益についてはグーグルのような税テクを駆使して連結ベースでの税負担を減らす努力をせよと企業に迫るものであれば納税者の共感を得よう。それをしないで法人実効税率だけを減らせと主張するのは、企業に甘すぎる。


ところで日経は主張の優先が曖昧になってきた。法人税率引き下げが改革の「本丸」であるなら、これまでうるさく言ってきた財政再建や消費税率引き上げはひとまず棚上げするということなのか。
主張を小出しにして読者を煙に巻くのは正直ではない。日経の目指す方向の全体像を示すべきである。例えば、財政再建のために法人税率を引き下げよ(ラッファー曲線のような理論的主張と共に。日経はラッファー曲線を信用していないが)とか法人税率を引き下げるために消費税率を引き上げろと主張するなら読者の納得(?)を得られるのではないだろうか。

追記 6/30 16:52
ZUU onlineにアップルやグーグルの租税回避スキームが説明されている。海外の利益に対しどのように租税を回避するかということがはっきりしている。

法人税2%?アップルやグーグルなどグローバル企業の節税術
http://zuuonline.com/archives/1922