米企業統治:スプリントとディッシュのクリアワイヤをめぐる争い

 6/19日経「スプリントVSディッシュ」「クリアワイヤなぜ争奪」「周波数多く活用の余地」

こじれてすぐには分からないがディッシュがこの取引に付け入って何とか利益を引き出そうとしているのではないかと思われる。それもアメリカ資本主義のアニマル・スピリットといってよいのだろう。

スプリント・ネクステル(SN) が議決権の50.2%を保有するクリアワイヤ(CW)を完全子会社化するため少数株主の株式を買い集めようとしたところ、当初SNの買収に興味を示していたディッシュ・ネットワークス(DN)がCW株主にSNが提案している以上の条件を提示し、これに対しSNはDNによるTOB差し止めを求める訴訟を起こしている。


法律専門家にとっては、TOB差し止め訴訟の行方が興味のあるところであろうが、ここでは企業統治、取締役会のあり方を日米で比較してみたい。

日本では殆ど有り得ないことであるが、「クリアワイヤの取締役会は先週、すでに主要株主であるスプリントの提案ではなく、ディッシュのTOBに応じるよう株主に勧告した」(ロイター)。

これが日本での買収競争であれば、CWの取締役会は色々な理由(例えば、長期的な企業価値の増大という曖昧な理由)をつけて親会社SNの意向に沿うようにSN提示の条件をCW株主に勧告したことであろう。子会社の取締役が親会社の顔色をうかがうことは日本では美徳(?)とさえ言える(グループの規律を守った)。取締役の責任や少数株主保護のあり方など法制上の定めが日米で異なるとはいえ、根底には日米の間には取締役や少数株主保護についての大きな考え方の違いがあることが本件では良くあらわれている。


日本の会社の取締役会がCWの取締役会のように経営陣の意向に反してでも少数株主に有利な条件を勧告する日が来るだろうか。海外資本の誘致を活発化させようとする政府の方針があるとすれば、日本企業の統治体制を海外投資家の理解できるものにすることが第一歩である。


DNの条件は、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば次のようである。

6/18/13 スプリント、ディッシュとクリアワイヤを提訴
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323382204578552642160092904.html
クリアワイヤ取締役会は12日、ディッシュによる公開買い付けを支持する方針を明らかにし、以前のスプリントとの買収合意を回避した。

クリアワイヤは、昨年12月にはスプリントが未保有株の取得に向けて提示した1株2.97ドルに当初合意したが、ディッシュがこれに対抗してクリアワイヤを1株3.30ドルで買収すると今年1月に提案した。スプリントはクリアワイヤの多くの株主からの反発を受け、4月に1株3.40ドルへと条件を引き上げた。ところがディッシュは5月終わりに、1株4.40ドルを提示した。

クリアワイヤの広報担当者は係争中のためにコメントできないと述べた。ディッシュの代表のコメントは得られていない。