成長戦略:投資減税は雇用を増やして国民を豊かにするのか

6/16日経一面の興味深い記事。「家電量産に3D印刷機」「パナソニック、コスト3割減」「部品金型、短期で製造」
コスト3割減とは設計や金型部門の人員を同程度減らすという意味で、設備投資を行うことにより雇用は減らすという趣旨である。決して、安倍首相が期待するように設備投資増→雇用増→賃金増というサイクルにはならない。

バブル期までは設備投資は雇用に結びついていた。だがそれは当時のことで現実は変わってきている。設備投資によって雇用が減るという現実を受け入れなければならない。
そして雇用を減らす設備投資に減税で優遇することはもう一度考え直した方が良さそうである。


6/13NYT クルーグマン教授のコラム“Sympathy for the Luddites(ラッダイト運動)”がこのことを論じる。以下はその要約。

ラッダイト運動は産業革命のさなか英西ヨークシャーのリーズの毛織物労働者が機械化に抗議した運動である。
機械化により、彼らから2−3世代後の英国人の生活水準は広く上昇したが、リーズの労働者たちはほとんど産業革命による利益を享受していなかった。

教授は2000年ごろを境にアメリカにおける広がる不平等の性格が変わってきたと指摘する。それまでは、不平等とは労働者間の不平等であった。労働と資本の間の利益の分配は数十年にわたり安定していた。ところが、2000年ごろから労働の取り分が顕著に減ってきた。

最近の調査報告によれば、多くの知的労働の自動化がすすみ、ソフトウエアによってこれまで大卒社員が行っていた作業を代替するようになってきた。進歩したロボットは製造業だけでなく、いくつかの医療専門職の仕事も行うようになってきた。

そこで、労働者は新しい技能を身につける準備をすべきなのかと教授は問う。それに対して、技能は技術進歩によりどんどん陳腐化するので、教育は拡大する不平等に対する回答ではないと述べる。

ではそれに対する解決策は何か。もし我々が中間層を主体とする社会を維持しようとするならば、医療だけでなく最低限の収入を保証するセイフティ・ネットを張り巡らす必要がある。そして、利益が労働ではなく資本へ流れる比率が常に高まっていく現実からは、そのセイフティ・ネットを維持する財源は企業利益や投資収益に対する課税が多くを担うべきであると主張する。

そんな主張に対し、再分配の悪を叫ぶ保守派の声が聞こえてくる。だが、彼らはどんな代替策を持っているのか。