米経済の回復は本物か

アメリカ経済
4月の雇用者数が前月比165千人増となり、NYダウ平均は新高値を更新した。米経済の回復は本物か(下記の日経記事を参照)。

クルーグマン教授は長期失業率が改善せず、アメリカの将来に影を落としているとして、財政と金融の両面からさらに刺激策を採るべきであるとNYTのコラムで論じている。これほどまでに続けて警鐘を鳴らし続けるのは珍しいことである。

5/2 Not Enough Inflation
4/28 The Story of Our Time
4/25 The 1 Percent’s Solution
4/21 The Jobless Trap
4/18 The Excel Depression(ラインハート・ロゴフのエクセルの処理誤りの件)


4/21 The Jobless Trap:長期失業者数を次のように示している(単位:百万人)。

- 2007年の好況期 現状
失業者数 7.0 12.0
6ヶ月以上の失業者 1.2 4.6
うち、1年以上の失業者 NA 3.0

教授はこの状況をジョブレス・アメリカンの固定化された階層を生み出しつつあると指摘する。そしてこれは政策の意思決定の問題であると断ずる。債務への恐怖にすくんでマクロ経済学がすべきではないと言っている事を行っている、すなわち政府支出の削減である。
誇張された債務への恐怖が、スローモーションの惨事を作り出している。多くの国民の生活を破壊するだけでなくアメリカ全体を貧しく、弱くしている。この愚行を続ければ続けるほど、その損害は大きくなる。


4/25 The 1 Percent’s Solution:この愚行が続く理由を政策エリートは、上位1%の金持ちからだけ経済の現状を聞いているからだとする。2008年の金融危機以来庶民はたいへんな苦しみを受けたが、1%は企業利益の増加や株価上昇によって満足できる成果を手にしていた。最近の財政引き締めの学術的根拠の崩壊(ラインハート・ロゴフのエクセルの処理誤り)は何か変えるだろうかと自問する。しかし、アメリカは1%の、1%による、1%のための政策を行う限りこの愚行を続けると悲観的である。


4/28 The Story of Our Time:アメリカ経済の真の問題は、供給側にあると説く人がいる。いわく、労働者の技術がニーズに合わない、失業保険が雇用意欲を阻害している、国民皆保険の普及が雇用を阻害している、などなどと。だがその主張はこれまでの彼らの発言から誤りであると教授は指摘する。今起きていることは、財政緊縮派は知的なイチジクの葉(都合の悪いものを隠すもの)を失い、批判を浴びている。これが不況に対して何かを行うきっかけになることを教授は期待している。


5/2 Not Enough Inflation:金融危機後FEDはマネタリーベースを増やしてきたが、多くの論者は金利が急騰する、手のつけられないインフレが起きるなどと批判してきた。確かに今、FEDはインフレを気にしている。インフレが低すぎることを。最初から、危機はアメリカ経済を「流動性のわな」に落とし込んだことは明白だった。バーナンキ議長や私は、このわなが続く限り通常の経済の原理のいくつかは働かないことを知っていた。アメリカ経済の最大の問題は需要が不足していることである。デフレは、その問題を悪化させる。
短期の問題を解決しない限り、それは長期の慢性的な低迷になっていく。短期の問題を放置することによって、我々自身を長期の失敗へと自らを追い込んでいく。


5/3日経 http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0305J_T00C13A5000000/

米雇用統計、4月16万5千人増 市場予想上回る
3月分も上方修正 失業率は7.5%に低下
2013/5/3 21:57 (2013/5/3 22:44更新)
 【ワシントン=矢沢俊樹】米労働省が3日発表した4月の雇用統計によると、労働市場の動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数は、前月に比べ16万5千人増となった。3月の改定値も同13万8千人増(速報は8万8千人増)に上方修正。サービスなどの雇用が底堅く推移した。ただ、政府部門は減少、回復が持続するか不透明さも残る。
 3日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が大幅に続伸して始まり、初めて一時1万5000ドル台に乗せた。4月の雇用統計が市場予想を上回ったのを好感し、上げ幅は170ドルを超える場面もあった。前日の欧州中央銀行(ECB)の利下げなど、先進国を中心に金融緩和が続くとの期待感も相場を下支えしている。
 3日の米シカゴ市場でも日経平均先物(6月物)が急上昇し、一時1万4180円をつけた。東京市場が連休に入る前の2日の日経平均株価終値(1万3694円04銭)を大きく上回る。
 4月の失業率は7.5%と前月から0.1ポイント低下。3カ月連続で下がり、2008年12月(7.3%)に次ぐ低い水準になった。
 雇用者数の伸び幅は、市場の事前予想の平均の15万人程度を上回った。3月は速報段階で9カ月ぶりに10万人台を割り込んだが、今回の改定で大幅に引き上げた。2月の改定値も前月比33万2千人増となり、12年1月以来、30万人台となった。