金融緩和:陰謀論でFRBの出口戦略を解説する日経

バーナンキ議長が日銀の金融緩和について、「先進国の金融緩和は各国の利益つながる」と擁護した。

このバーナンキ発言に対して、日経は陰謀論で議長の真意を解説している。
日本にFRBの出口戦略のババを引かせようとしている(3/31日経 ポジション)。
すごい読みで金融版推理小説としては面白いかもしれない。
3/31のコラムは担当記者の分析を記すもので、人により様々な見方があろうし、それが真相に迫っているかどうかは別物である。
ここで展開されるストーリーは、一つの可能性として考え得るかもしれないが、アメリカの利益になる政策ではないから賢明なバーナンキ議長が採用するとは思えないし、それ以上に黒田総裁や浜田教授が誘導されてババをつかむというとても自虐的な見方が根っこにある。

そこまでであれば少しおかしな議論を展開していると見逃すことが出来たのだが、ところが今度は一面の特集記事(4/12 異次元緩和)で「米国の日銀支持は、米量的緩和策第3弾の出口戦略に伴う世界的な流動性減少のショックを日銀が和らげてくれるという思惑があればこそ」といつの間にか3/31のコラムの見方が既定の事実とされている。


どうしても日経は今回の金融緩和は金利急上昇で幕を閉じることにしたいようだ。少し前までは、財政ファイナンスと思われると金利が急上昇すると唱えていた。

日経の金利急上昇説は、結局、旧日銀執行部は思慮深い先を見据えた政策を展開していた(つまり財政に負荷をかけないことに重きを置いていた)が、新執行部は猪突猛進しているだけで先のリスクに目をつぶって危険な道に踏み入っていると言いたいのであろう。財政第一の日経らしい論である。

それはそれでも結構だが、陰謀論自虐史観を振り回して議論を展開するようでは、経済のロジックから事象を理解したい読者からは見放されてしまうのでないだろうか。


3/31日経 ポジション「FRB議長の深謀遠慮」「金融緩和、出口戦略にらむ」

ポイントは、FRBが緩和競争を正当化する一方、自らは緩和の輪から徐々に抜けようとしていることだ。2008年のリーマン危機から9月で5年。空前の金融緩和を続けた米国では住宅や雇用市場の調整がかなり進んだ。「議長の視線の先には緩和の出口が見えている」(みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミスト

景気や物価に不安のある日本、英国、ユーロ圏はこれから緩和を加速する公算が大きい。米国との金利差が広がり、投資マネーは円、ポンド、ユーロからドルに流れやすくなる。米金融大手メリルリンチが行った3月の機関投資家調査では、7割超がドル上昇を予想した。

米国がドル独歩高を受け入れてまで、各国の緩和を促す狙いは定かでない。ただ緩和を縮小しながら米金利の急上昇を防ぐには、「他の国が緩和を続け、金利を低く保ってくれた方がいい」(唐鎌氏)。出口戦略を有利に進めるしたたかな計算が働いた可能性がある。

「緩和のリレー」のバトンを受け継ぐ黒田東彦日銀総裁は難しいかじ取りを迫られる。
大胆緩和に突き進んでリレー最終走者になった時、世界の金利が上昇していれば軟着陸は格段に難しくなる(注)。リレーがババ抜きと化す危険がある。
(注)「軟着陸は格段に難しくなる」とは、「金融緩和を終了することにより国内の長期金利が急上昇するリスクが格段に高まる」ということのようだ。

4/12日経 異次元緩和「期待の先に」「次はアベ、世界が注視」「米英が援軍」「成長が条件に」

米国の日銀支持は、米量的緩和策第3弾の出口戦略に伴う世界的な流動性減少のショックを日銀が和らげてくれるという思惑があればこそ。
(中略)
結局はアベさんが何をするかだ。世界はそう見る。円安をテコにしたデフレ脱却策を容認する分、安倍晋三政権が強力な規制緩和を伴う成長戦略、貿易自由化、財政健全化に真剣に取り組むかどうか。