金融緩和の次は第3の矢(成長戦略)なのか

4/5日経「日銀、緩和策を総動員」「黒田総裁、異次元の政策」「目標、金利から量へ」「国債購入、月7兆円」

期待されていた以上の緩和策を打ち出して、市場ではサプライズと受け止められているようだ。
今回の金融緩和の波及経路は資産価格の上昇、為替相場円高是正、長期金利の低下につながっているが、金融緩和に続く次の一手については「政府が効果的な成長戦略を実行に移すことも重要課題となる」(伊藤元重・東大教授)とされている。しかし、それでは今吹いている追い風をみすみす見逃すことになろう。

成長戦略の策定にどれだけ時間がかかるか分からないし、果たしてそれがどれだけ効果があるかは未知である。それよりも、民間が資産価格高(例えば東証1部時価総額:昨年11月末271兆円、4/4 364兆円)や円高是正(円・ドル相場:昨年11月末78.00円、4/4 95.60円)、長期金利の低下(新発10年国債相場:昨年11月末1.065%、4/4 0.435%)を生かしてどのようにビジネスを展開していくかが重要である。
民間を特定の方向へ誘導するのは無理だとしても、これからの経済指標を丹念に分析し今回の金融緩和が民間ビジネスにどれだけの影響を及ぼしたかを探ることは可能であろう。それによって、今回の金融緩和の成否をある程度予測することが出来るのではないだろうか。

また、金融緩和の副作用を強調して「政府も消費増税社会保障改革に責任を持ち、強い覚悟で財政再建に取り組むべきだ」(4/5日経社説「黒田日銀は柔軟で規律ある量的緩和を」)というのは、ようやく芽生え始めたデフレ脱却期待に逆行するデフレ促進論で今回の金融緩和に消極的なように読める。

財政再建を論じるなら、4/4日経「3メガ銀、利益2兆円」「株・債券高で7年ぶり水準」という前向きな面を見ていくべきであろう。2012年度は各行共に繰越欠損金が解消し、フルに納税できるのである。課税所得と公表利益の違いはあるが、仮に両者が同じとして実効税率40%(地方税込み)とすれば、国庫に8千億円の税収が入るのである。国と預金者から多くの支援を受けながら、10年以上も納税を果たしてこなかったのが、ようやく納税できるようになった。ここで日本経済を再生するために「法人税減税などに取り組む必要がある」(4/5日経社説)と主張するのは財政再建というテーマからは的外れで、特定業界への利益誘導を図っているように見えないこともない。

4/5日経一面より

- - これまで 量的・質的緩和
1 2%の物価上昇率目標の達成時期 できるだけ早期 2年程度と明示
2 誘導目標 無担保コール翌日物金利 マネタリーベースを2年で2倍に(注)
3 国債買い入れ、量 13年は20兆円増加 年間50兆円増加
- 国債買い入れ、質 残存期間1−3年 40年債まで広げ、平均残存期間は7年に
4 リスク資産の買い入れ
-  ETF 13年は5,000億円増加 年間1兆円増加
-  REIT 13年は100億円増加 年間300億円増加

(注)現在の138兆円から2年後に270兆円に膨らませる。3月のマネタリーベース(月中平均)は134兆円で、現金87兆円、当座預金47兆円であった。資金供給量を132兆円増やすが、日銀の見通しでは銀行券が3兆円増え、残りの128兆円は当座預金が増えることになる。