キプロス後のグローバルな資本移動の展望

3/24NYT クルーグマン教授のコラム「ホットマネー(熱銭)の憂うつ(Hot Money Blues)」。
キプロス後のグローバルな資本移動がどのようになるかを展望したものである。


キプロス危機の結末がどのようになろうとも、一つだけ確実なことがある。今後数年間はその島国国家は、極めて過酷な資本規制を行うということだ。

これは注目すべき進展である。これは、キプロスにとってある時代の終わりを記すものになろう。ある時代とは、キプロスが税や調査を避けたい裕福な個人に対して彼らの金を安全に置いておける場所であると過去10年間に売り込んできた時代である。しかし、そのことはもっと大きなことの終わりの始まりとなるかもしれない。すなわち、規制されない資本の動きが望ましい規範であるとみなされた時代の終わりである。

第2次大戦後20年ほどは国境を越えた資金の移動には制限がかけられていて、それは良い政策であるとみなされていた。

時代が経つにつれ、自由市場思想の広まりとともに、規制が緩和されることになっていった。

第2次大戦後30年の間には、我々が近年なじみとなった金融危機というものはめったに起こらなかった。ところが、1980年以降、金融危機は頻発するようになった。

これらの金融危機に共通するテーマは何か。財政のだらしなさ。これには唯一、ギリシアが該当する。次に銀行家の暴走がこれよりましな説明になる。チリ、スウェーデンキプロスが当てはまる。これらの例を除けば、危機は急激な資本流入と流出によってもたらされた。

世界的資本の自由化と金融危機の急増の相関関係はハーバード大学のダニ・ロドリクによって1990年代から警鐘が鳴らされていた。最近までこれは貧困国で起きることで富裕国では抵抗力があると論じられていた。しかし、ヨーロッパの苦難はこの議論が希望的観測であったことを明らかにした。

そしてそれはヨーロッパだけではなかった。アメリカもまた過去10年のうちに、海外の資金によって油を注がれた巨大な住宅バブルがあり、その後バブルが崩壊した後に不快な二日酔いに襲われた。その損害は我々が資金をドルで取り入れたことにより緩和されたが、それでも、1930年代以降の最悪の危機であった。

さてどうなるか?金は自由にどこへでも行き来するべしとする考えが全面的に突然なくなるとは思わない。しかし、政府が資金の流入の速度と流出の速度を介入して制限するにつれ、次第にその考えが侵食されていくのかもしれない。グローバル資本主義は、大幅にグローバルさを失っていく経路にあるといえるのかもしれない。

And that’s O.K. Right now, the bad old days when it wasn’t that easy to move lots of money across borders are looking pretty good.
そして、それは結構なことだ。今現在、多額の金を国境を越えて動かすことが今ほど簡単でなかった悪い昔の日々がとてもよく見えるのだ。