3/25日経 金融緩和政策に関し対照的な記事2本

3/25日経 金融緩和政策に関し対照的な記事が2本掲載された。
1. 核心「かくも重き黒田氏の使命」「アベノミクスを超えて」
2. 経済教室「日銀新総裁の課題」「期待への働きかけ強化を」「緩和効果、説明丁寧に」「通貨戦争の批判当たらず」伊藤隆敏東京大学教授


核心は財政再建の立場から金融緩和への危うさを懸念しつつ、黒田新総裁へ安倍首相の要請する賃上げに全面協力することや財政の番人になること、成長戦略へ積極的な発言を行うことまで求めている。日銀総裁にそこまで権限と責任を広げるのは驚きだ。
核心は「だが、量的緩和は期待を反映する為替や資産価格を動かせても、消費者物価まで動かすには時間がかかる」と今回の金融緩和政策に理解を示しているが、「時間がかかる」から即効性を求めて、賃上げ要請に全面協力することや成長戦略へ積極的な発言を行うことを求めているように読める。
財政の番人になることは、「ユーロ圏の南欧諸国より深刻な長期債務を抱えながら財政赤字に歯止めが利かなくなれば、日銀の国債購入は財政ファイナンスと受け止められかねない。国債バブルが崩れれば、財政・金融危機が連鎖する」懸念からだが、「財政ファイナンスと受け止められかねない」のを議論の前提とするのは蓋然性の低い経路からの見方のように思われる。欧米でも債券自警団はついに登場しなかった。
そもそも、黒田総裁の下での金融緩和が(もし成功するとして)成功していく過程の中で、名目金利は3−4%程度に向けて上昇するものであるから、それをもって「国債バブルが崩れれば」という見解は、本音では金融緩和政策を信じないことになってしまう。5%を超える金利上昇であれば確かに問題であろうが、経済教室ではそのような恐れはないと断じている。
「かくも重き黒田氏の使命」は結局、コラムニストの想像の中で増殖された新日銀総裁の役割から生み出された一見もっともらしい標語であった。


経済教室は日銀総裁の役割を拡張することなく、日銀総裁に与えられた権限の下でどのように金融緩和を進めるかが論じられている。このように金融緩和のやり方についてフォーカスしていくのが議論を深めることになる。

ポイントは次の点を掲げる。
   ・ 購入国債の満期構成の長期化や規模拡大を
   ・ 実体経路への伝達経路の丁寧な説明が重要
   ・「ハイパーインフレを招く」との見方は誤り

経済教室の「それには(注:株価・地価下落が金融システム不安に結びつかないようにすること)金融システム監督政策が鍵を握る。国際的にも議論はあるが、バブルへの対処には金融システム監督の様々な規制が重要だというのが主流の考え方である」という指摘は重要である。ユーロ危機とりわけキプロスの問題はバブルの問題以上に金融システムの問題が根っこにあった。

確かに経済が活性化し、物価が2%ほどに上昇するのには時間がかかるだろう。目標の2年でも無理かもしれない。だからといって短兵急に成果を求めてならないことは、核心も認めるように「消費者物価まで動かすには時間がかかる」のであるから、(目標は政府と共有されているのであるから)日経などメディアは手段についてまで政治から無理筋の注文がされることのないよう監視する必要がある。

すでにさいは投げられたのであるから、それが成功するように考えるのが生産的ある。