3/5日経「日銀総裁候補 所信表明の要旨」 黒田東彦氏 物価目標の達成時期を明言

3/5日経「日銀総裁候補 所信表明の要旨」「資産買い入れ不十分」「各国中銀と連携重要」黒田東彦

物価目標の達成時期を明言。

所信表明では「物価目標を一日も早く実現することが何よりも重要な使命となる」と述べていたが、質疑応答では維新・中田宏氏に対し「グローバルには2年程度がスタンダードだ。それを目指すことになると思うが」と答え、生活・畑浩次氏へ「だが、個人としてはそれくらいのタイムスパン(達成時期は2年かという質問)を念頭に大胆な金融緩和をしていくつもりだ」と2年という期間を示した。

今後はこの2年間を軸に政策の評価が行われていくことになる。

今後必要になるのは金融政策の評価の基準を今から用意して、節目節目で政策を評価するすることである。
例えば、次のような状況になったらどう評価するのか。

A 2年後に物価上昇率は2%になったが、他の経済状況は今と変わりなかった。目標達成と評価するのか最終的な効果が出てこないからさらに金融緩和を継続すべきであると評価するのか。

B 2年後に物価上昇率は1%であったが、他の経済状況は好転していた。さらに物価上昇を促すためにアクセルを踏むべきと評価するのか経済状況は好転したので満点とはいえないでも合格とするのか。

アベノミクスが証明済みの約束された成功をもたらすものではない以上、慎重に事を進める必要がある。かといって長期金利が急騰するなどとおびえてばかりいては冷静な熟慮した判断を下せるものではない。


今日の大機小機「大胆な金融緩和の前提」(希)はアベノミクスのばくち的要素を指摘している。危険物を扱うなら、進行中のモニタリングは欠かせない。それこそがメディアに課される使命であろう。

今や「大胆な金融緩和」でデフレ脱却を目指すアベノミクスの成否が経済界最大の関心事だが、この問題を考えるには、2つの事実を確認しておくことが重要である。
1つは、フィリップス曲線で示される景気と物価の関連性が希薄化していることだ。実際、米金融危機前の好景気時にも日本の物価はほとんど上がらなかった。一方、現在の欧米は多くの失業者を抱えつつプラスのインフレ率を維持している。だとすれば、景気を良くして少しずつ物価を上げていくのは容易ではない。
もう1つは短期金利がゼロとなった後の非伝統的金融緩和(国債の買い入れなど)の効果については理論的、実証的に定説がないという事実だ。
10年あまり前の日本の量的緩和も現在の先進各国の金融緩和も市場への反応はともかく、実体経済への影響は定かでない。
つまり、デフレ脱却にはインフレ期待に働きかけることが重要だが、どうしたらその期待を動かせるのかはよく分からないのだ。結局、脱デフレ政策は実験、ないし賭けの要素を持たざるを得ないこととなる。

それなくして(中期的な財政規律に関してしっかりとしたコミットメントを打ち出すこと)のアベノミクスは「ジリ貧を避けようとして、ドカ貧に陥ってしまう」無謀なばくちになりかねない。