3/3日経「日曜に考える」「国債金利の急騰はあるか」 与謝野氏と嶋中氏

3/3日経「日曜に考える」「国債金利の急騰はあるか」
与謝野馨
「上がる瞬間 予測不可能」「財政再建は政治の責任」
嶋中雄二氏
「政府の想定 当面超えず」「円高・デフレ脱却が先決」

全然スタンスの違う二人の意見を並べても、議論は深まりそうもない。


与謝野氏:安心していられるのはあとひと月かそこらじゃないかと心配だ。無制限に資産を何でも買えば、バブル再来の危険もある。長期金利は理由もきっかけもなく、静かに上がっていってしまうものだ。理由は後からいろいろつけられるけれど、上がる瞬間はなかなか分からない。何気ないちょっとした出来事が経済のかく乱要因になり得る。菅内閣の経済財政相として原案をまとめたときも「消費税が10%やそこらで問題は解決するのか」と自問した。「解決するわけがない。ないけど、今に生きる政治家としてここまではやらなければならない」が答えだった。10%は象徴的な意味しか持たない。


嶋中氏:現在はアベノミクスが極めて効きやすい恵まれた環境にある。小泉改革の時も投資拡大局面だったが、公共投資を抑制したことで、思うほど設備投資が伸びなかった。ただ長短金利差が開かないと金融機関の貸し出し意欲も高まらないので、長期金利の上昇を極端に不安がることは建設的な議論ではない。4−6月期に名目GDPがプラスに転じ、7−9月期から政府債務残高の名目GDP比率も低下に向かう。賃金があまり上がらず、金利上昇要因の物価だけが跳ね上がることは、論理的にあり得ない。例えば、物価が急騰するハイパーインフレを懸念する意見は、国民の不安をいたずらにあおっている感がある。マネタリー・ベースが増える円高・デフレからの脱却過程では、長期金利がある程度上がるのは当たり前で、そこだけ取り出して問題視するのはおかしい。


日経は嶋中氏からなんとしても長期金利上昇のマイナス面を引き出そうとしてか、「長期金利の急上昇リスクが高まりませんか」「長期金利の急上昇は起こらないと」「アベノミクス金利急上昇を招くと懸念する声があります」と執拗に問い詰めるが、嶋中氏には「建設的な議論ではない」「論理的にあり得ない」「そこだけ取り出して問題視するのはおかしい」とかわされている。

これと対になる与謝野氏へのインタビューは与謝野氏の信念の披露のようなものであり、経済学的な議論にはなりにくい。


長期金利が急上昇するかもしれないというのは、狼が来るぞというのと同じ分かりやすいたとえ話なのかもしれないが(債券自警団)、問題は現実にアベノミクスが動き出すのだから長期金利が上昇し始めたとき(与謝野氏が言うようにその瞬間はとらえられないかもしれないが)それを制御するどのような道具(アベノミクスからの撤退も含めて)があるかを論じるのが生産的ある。