3/2日経・特集記事「新日銀、脱デフレへの道」

3/2日経・特集記事「新日銀、脱デフレへの道」「大胆緩和 出口にも関門」「未踏の領域へ」「市場の信任カギ」

この特集記事の前半は新執行部による緩和手法を伝え、その効果について「未踏の領域へ」という認識を述べていて客観的なものだが、後半で出口論や副作用を論じているのは経済紙らしい分析に欠けていて思い込みが先走っている。


出口論や副作用は「未踏の領域へ」という認識からスタートすべきである。
それというのも、債券市場では3/1には10年物国債利回りは0.645%に低下し、一時0.640%と2003年6月以来、9年8ヶ月ぶりの低水準となった。債券市場が語るのは、今後10年間は金利の上昇は無いという事である。
つまり、金融市場は現状とあまり変わりは無いと見ている。

このことは大胆な金融緩和からの出口論ではなく、2年たっても効果が現れない場合には金融緩和策からの撤退があり得ることを意味する。金融緩和論者には知的敗北であるが、その時に次の一手を打つために、金融緩和策に変わる政策の理論構築を今から手をつけねばならない。
第二次大戦前に山本五十六将軍が近衛首相に「是非私にやれと言われれば一年や一年半は存分に暴れて御覧にいれます」と語ったが、最初の矢が尽きた時に次の矢をどう放つかが長期的戦略には欠かせない。
重層的な備えがあって初めて「未踏の領域へ」歩み出せるというべきである。


以下は、日経特集記事の要約。

金融緩和の手法については次のように述べている。何をやろうかとするイメージが具体的に示される。

黒田氏を支える副総裁候補の岩田規久男氏はさらに緩和に積極的で、2%の物価目標を「2年ぐらいで達成しなければならない」と宣言している。そのために資金供給量の目安になる日銀当座預金残高を「現在の2倍近い70兆円以上に増やしてもいい」(注)と話している。
(注)2月末で、43.8兆円。

その効果については、日経は懐疑的である。

ただ、どこまで緩和すれば本当に効果が上がるのか、前例のない実験という側面は否めない。

出口論を言うのは良いとしても、懐疑的なスタンスを離れて金融緩和の効果があたかもあるかのように論じるのは論理的ではない。

絞込みが早すぎれば、デフレに逆戻りする。逆に、遅すぎれば、バブルを引き起こす懸念がある。

副作用については、マイナス面を心配するのは結構だが、その時に何をやるかを論じるのが生産的である。日経の本音は財政の持続性にあるのだろう。出口論とも首尾一貫しない。

だが、その手法(長めの国債を買って長期金利を低く抑える手法)は、日銀が政府の借金を肩代わりする財政赤字の穴埋めと受け取られ、円安・株安・債券安が同時に起きる「日本売り」を招く懸念がある。