電力システム改革専門委員会報告書

2/9日経・電力システム改革専門委員会報告書(以下、「報告書」)が公表された。
骨子は次の通り。

2015年に電力需給を広域で調整する機関(広域系統運用機関)をつくる。16年には電力小売りを全面自由化し「地域独占」をなくす。電力会社の配送電部門の中立性・独立性を高める発送電分離は18〜20年に実施する。

報告書は以下に掲載。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/012_03_00.pdf


電力システム改革の目的は、電力業界の競争を促し「我が国の電力供給構造全体をシステムとして捉えた上で、包括的な改革を行うこと」である。
具体的には次の三点が掲げられている。
1. 広域系統運用機関の創設により、電気が余る地域から足りない地域へと全国的規模でのやり取りを促す。例えば、西日本から東日本へ電力を融通する、あるいはその逆。
2. 小売りの参入を自由化し、家庭や中小商店向けに誰でも電気を売れるようにする。
3. 仕上げが発送電分離で、配電網を誰でも安心して使えるようにして、新規参入を促す。競争が活発になれば、家庭向けの料金規制をなくす。


報告書では競争を促すことに重点が置かれ、供給の確保についてはあまり触れられていない。報告書では「Ⅴ.安定供給のための供給力確保策 」で供給サイドについて述べられているが、多くの課題を残している。

供給については、次の点が考慮されなければならない。
現在、東日本、西日本共に供給が不足気味で、需要が上振れする夏や冬には需要家に節電を依頼しているのが実情である。このような需給状況から競争を促す仕組みに切り替えると、電力料は高くなる。電力料が高くなり供給が増えれば中期的には需給は安定化するのだが、原子力発電の稼動が不透明なため供給側は設備投資をして供給を増やすことには積極的にはなれない。そうなると、中期的に電力料が高止まりするということになってしまう。
1. 原子力発電をどうするか(2010年度の電源構成シェアは29%)
原子力発電の再稼動の判断を、原子力規制委員会にだけに委ねるのは無理がある。再稼動のリスクと再稼動しないリスクを比較考慮して最終的な判断をする体制が必要である。規制委員会には再稼動のリスクを判断する能力はあるが、再稼動しないリスクを判断する能力はない。

2. 新規参入業者への過度の優遇は競争を歪める
新規参入業者を呼び込むための優遇策が提言されているが、過度の優遇は競争条件を歪めるので早く同一の条件で競争が行われるように見直すことが必要である。特に供給予備力を確保するための負担をどのように負わせるかの工夫が必要になる。

3. 東日本と西日本で電力を融通することは合理性があるのか
電力を融通することよりも、長期的な(例えば50年)スパンで電源周波数の統一を図るほうが合理的ではないか。