アベノミクスの奇妙なねじれ:賃上げか賃下げか to raise pay or not

安倍政権は賃上げと賃下げを同時に行おうとしている。どちらが正しいのか。
民間へは賃上げ、公務員には賃下げの両面展開である。

2/13日経「アベノミクス、賞与でアピール」「首相、異例の賃上げ要請」「参院選前に成果急ぐ」
安倍晋三首相は12日、経済3団体のトップと首相官邸で会談し、業績が改善した企業に対して賃上げを求めた。デフレ脱却を狙うアベノミクスの恩恵を国民が実感できるようにするのが狙いだ。今夏の参院選を前に、賞与の引き上げでひとまず政策効果をアピールしたいとの思惑も透ける。
首相が異例の賃上げ要請に踏み切ったのは、2%の物価上昇を達成しても、名目賃金が上がらなければ実質的に賃金が目減りするとの批判が野党から出ているためだ。

その一方で、地方公務員の給与は削減を要請している。

2/13産経「地方公務員給与の削減状況を調査し公表へ 総務省
地方公務員の給与削減問題をめぐり、総務省は13日、都道府県の総務部長らを対象にした説明会を開き、遅くとも7月までに給与の引き下げを実施するよう要請した。その上で、各自治体が国家公務員並みに平均7.8%の削減を進めているのか今後、調査に入り、結果を公表する方針を示した。
 複数の自治体が共同で運営する「一部事務組合」の職員についても、地方公務員と同じく給与削減を実施する考えも明らかにした。給与のほかに各種手当てについても、国と同様に原則として期末・勤勉手当(ボーナス)は9.77%、管理職手当は10%の一律引き下げを求めた。

まさか公務員の給与の増減は経済に中立的であると考えているのだろうか。

インフレ・ターゲット論の標準的な考えは、物価上昇→賃金が相対的に低下→雇用増加→賃金上昇という経路を辿ることになるので、ここで賃金を上げることを要請するのは変則的である。もちろんそんなことは承知の上で、業績向上から今夏の賞与の上昇が見込まれるのでその成果をアベノミクスの成功事例として横取りするのが真意であろう。

2/11(月)日経「核心」で、「アベノミクスの第2幕」「給与増、首相からお願い」は、首相の賃上げ要請を肯定的にとらえ「アベさんがベアを後押しすれば、景気はブル(強気)になる。エコノミストの言である」と評価するのはいささか皮相的ではないか。