9/28日経 明治大学特任教授・大沼保明氏「異質論排し信頼醸成を」

9/28日経「特集 日中問題を考える」「識者に聞く」
明治大学特任教授・大沼保明氏「異質論排し信頼醸成を」


ほとんどのメディアが中国異質論を唱えるなかで、大沼教授の「戦前の日本と似ている状態にある」という指摘は鋭い。
我々はつい先の出来事を忘れ去ったようであるが、当時の日本人のメンタリティは今の中国以上に国粋主義的であった。それと比べると、彼らの行動は不思議でも何でもない。

民族の勃興期には、自分のアイデンティティーを見直したい、世界の中での立ち位置はどんなものかを知りたいという要求はしばしばおきている。戦前の日本は欧米に追い詰められ暴走してしまった。これをうまくコントロールして世界の覇権を握ったのが英国であった。

中国も今その岐路にあるのであろう。戦前の日本のような方向に追い詰めず、教授の指摘するように「中国内の国際協調派をいかに育てていくかが鍵だ」。
「多国間で重層的枠組みを」(9/26日経経済教室)、「尖閣問題、国際社会味方に」(9/27日経経済教室)は必要だが、同時に内部にも普遍的な価値観を共有するグループを育て上げていく策が欠かせない。それこそが、「大局観」をもった政治、外交のあり方であろう。


以下は、主要なポイント。

欧米への被害者意識と大国意識を併せ持ったために過剰反応に陥りがちな点では戦前の日本と似ている状態にある。当時の欧米はその複雑な心理に配慮せず、日本を戦争に追い詰めた側面もあった。中国の対外協調路線を後押しするためにも、日本は彼らの被害者意識をことさらかき立てないような細心の注意が必要だ。

国家の成熟度として日本や欧米に比べて遅れているのは間違いないが、中国異質論は過去の欧米における日本異質論と同様、誤っている。中国も民主化、法の支配などで近代化せざるを得ず、欧米や日本などと同じく責任ある行動をとる大国となる可能性は十分ある。中国内の国際協調派をいかに育てていくかが鍵だ。

日本としては中国側に対し、言葉遣いやタイミングの面で配慮を欠いた点はあったことを認めると同時に、中国自身の利益のためにも諸国に信頼される大国にふさわしい行動をとるよう率直に求めていくべきだ。