中国人の交渉術:下馬威(シャマウイ)

中国人の交渉術:下馬威(シャマウイ)

これは春秋戦国時代に関する本に書かれていることなので、現代にも通用するかは分からないが、参考に掲げる。

安能務:春秋戦国志・講談社文庫
序章「初めに春秋戦国があった」

そういうわけで、二人以上の他人が集まれば、いずれが風上、いずれが風下に立つか、が問題となる。その「場」がざわめく。そして、ざわめきの場に原始の、いわゆる「政治」が始まる。
初めに政治は、威丈高な身振り素振りと、図々しい自己顕示の衝突する「場」で起きた。いわば「下馬威」で始まる。出会い頭にかますハッタリのことだ。機先を制する恫喝である。いや、強烈な自己主張と、それを押し通す技量のことだ。
出会い頭の「下馬威」で勝負が決まらなければ、つづけて、恫喝と説得、操作と策謀が始まる。果ては暴力と強制、さらには、精神撹乱のあの手この手や、三百代言が飛び出す。
すべては「牛耳を執る」ための駆け引きだ。牛耳を執るとは「牛耳る」ことである。諸侯「会盟(血盟)」の場で、覇王がいけにえの牛の耳を握ったことから造られた言葉だ。つまり牛耳は覇権の象徴である。


時代は大きく隔たるがこのようなメンタリティーがあるかもしれない相手に対して、内容のあいまいな「いまの日中関係には大局的な観点から対応したいと意見を申し上げた」(9/9、APEC首脳会議での立ち話の際に、胡錦濤国家主席に語った野田佳彦首相の発言)では果たして通じたのかという疑問が残る。