尖閣諸島問題:野田首相の誤算

尖閣諸島問題:野田首相の誤算

尖閣諸島の周辺がいよいよ緊張を高めている。今日中にも、千艘の漁船が尖閣周辺に集結すると報じられている。これに対する国の対応はどうなのか。唯一野田首相が明言したのが、国が地権者から買い上げる際の次の発言だった。

産経ニュース:尖閣諸島購入の動き2012.8.12 23:37 より抜粋

都の動きを受け、政府も7月7日、野田佳彦首相が「尖閣を平穏かつ安定的に維持管理する観点から、所有者と連絡を取りながら総合的に検討している」と述べ、魚釣島など3島の国有化に動き出した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120812/plc12081223390007-n3.htm

今のところ「尖閣を平穏かつ安定的に維持管理する」ことには失敗しているようであるが、首相からの釈明はない。

9/18日経
野田義彦首相はNHK番組の収録で「大局観を持ってクールな対応をすることが大事だ」と中国に自制を求めた。

つまり、悪いのは中国でわが国はそれを見守るしかないというのである。

首相の7/7の発言の裏にあるものは何であったのか。これについて解説した読み物はないが、次の様に解されるのではないか。

1. 先方の要人と話がついていたが、何らかの事情でその話が反故にされた。
2. 先方の事情は一切顧慮せず、根拠なき希望的観測を述べた。

これまでのところ、大臣クラスがこの問題で先方のカウンター・パートと密に協議したことは報じられていない。そうであれば2の可能性が高いが、これ以上は想像の話になってしまう。


千艘の漁船には「決死隊」も紛れ込んでいるかもしれない。彼らの挑発に乗って、不測の事態を引き起こせば取り返しのつかない軍事的衝突に発展する可能性も無しとはしない。といっても、外交交渉でも、わが国が譲歩を迫られるだけで進展は見込めない。前回の衝突では、人質を取られレア・アースという産業の金玉を握られた。袋小路にはまり込んでしまったかのようである。

「大局観を持ってクールな対応をする」のは野田政権で、相手の弱みを見極めそこから妥協の道を探るのが残された方策ではないだろうか。

漁船団は第二の元寇なのか、あるいは尖閣は現代版白村江の決戦場になるのか、重大な岐路である。

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追記 9/19/12 本日の日経


日経一面「拙い外交、傷広げる」「国力低下背景に」
野田政権は中国政府と交渉を行っていたがその出方を読み違えていたと伝えている。

原因はさまざまだが、ひとつは中国の出方の読みあやまりだ。「政府が買うのはきちんと管理するためだ」。尖閣諸島の購入計画が浮上した7月ごろから、政府は中国側と接触を繰り返し、こう説明してきた。そのときの反応も踏まえて、米政府にも「日中で意思疎通はできている」と伝えていた(日米関係筋)。(中略)一因は日中のパイプの乏しさにある。