尖閣諸島問題:野田首相の誤算その2

昨日の日経「拙い外交、傷広げる」で、政府は中国当局と事前にすり合わせていたことが報じられた。
産経ニュースは、野田首相が「いろんなルートを通じて説明してきた」ことを伝える(事前か事後かは不明)。

中国の反発規模は想定外 首相、特使検討も
2012.9.20 00:38 [野田首相
 野田佳彦首相は19日夜のテレビ朝日番組で、沖縄県尖閣諸島の国有化に抗議する反日デモなど中国の反発の高まりについて「一定のハレーションは考えたが、規模は想定を超えていた」と述べた。
 首相はまた、「国有化は平穏かつ安定的に維持管理することが目的であることを、再三、いろんなルートを通じて(中国側に)説明してきたが十分に理解されなかった」と強調。その上で、関係修復に向けて要人を中国に派遣する可能性に関し、「特使として、これからどうするかも含めて検討したい」と語った。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120920/plc12092000400001-n1.htm


中国当局とのすり合わせがあったとすれば、政府が尖閣国有化に向けてかじを切った背景もいくらか見えてくる。

尖閣国有化:「安定的な維持・管理が目的」藤村官房長官毎日新聞7.9)
 2012年07月09日 12時29分(最終更新 07月09日 12時44分)

 藤村修官房長官は9日午前の記者会見で、尖閣諸島沖縄県石垣市)を国有化する政府の方針について「目的は尖閣諸島や近海の平穏で安定的な維持・管理の継続だ。(地権者との)賃借(契約)は1年ごとで、より安定的なものにするという考え方は当然ある」と理由を説明した。
 また中国や台湾が反発していることについて「中国からは外交ルートで、台湾は交流協会を通じて申し入れがあった。当方からは尖閣諸島への(日本固有の領土だとの)一貫した立場を伝え、申し入れは受け入れられないと明確に伝えた」と述べた。【小山由宇】
記事へのリンクは消滅している。

1. 中国当局から石原都知事尖閣購入を阻止して欲しいとの依頼があり、野田政権は自身の領土防衛姿勢をアピールする思惑と重ねて、その誘いにのった。国有化を実行するまでの野田政権は自信をもって進めていたように見えた。ただその中国当局は中枢部の意思を代表するものではなく、それを確かめなかった野田首相は中国側の反応が「想定を超えていた」と認めざるを得なくなった。あるいは、中国当局の仕掛けに搦め捕とられたのか。
2. 野田首相は領土問題への弱腰姿勢を批判されていることへの打開策として、たまたま浮上してきた石原都知事尖閣購入を奇貨として、自ら国有化へかじを切ると同時に、北京に対しその方針を売り込んだ。「大局的観点から」と。しかし、野田首相の思惑とは別にそのルートは上層部に通じてはおらず(あるいは、それを利用されて)、「想定を超えていた」中国側の反応に戸惑っている。

真相は分からない。時間が経てば少しずつ漏れてくることもあろう。気長に待つことである。

今回の問題を第二のノモンハンとせず、教訓を学び取るべきであろう。