エネルギー・環境戦略

9/15 日経「原発ゼロ 矛盾随所に」「再稼動を明記 核燃サイクル継続」「選挙にらみ迷走」

政府は14日、2030年代に原発稼動ゼロを目指す方針を盛り込んだ新たなエネルギー・環境戦略をまとめた。原発に依存しない社会の一日も早い実現をうたう一方、安全を確かめた原発の再稼動や使用済み核燃料の再処理事業の継続も明記。原発の廃棄と維持の両方向の議論を併記し、矛盾や実現性の危うさを抱える内容になった。


「革新的エネルギー・環境戦略  平成24年9月14日」(以下、「戦略」と略す)は、下記に。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120914/20120914_1.pdf

当然のことながら「エネルギー・環境戦略」は酷評されている。面白いことに脱原発を訴えるグループからも「30年代では遅すぎると不満も漏れた」(同日日経社会面)。

個々の問題点は日経に指摘の通りで、ここでは政府が自らエネルギー政策の根底となる姿勢を放棄していることの非を述べたい。

1. 御用聞き政治は政党政治の否定
今回の戦略の取りまとめは、「国民の多くが『原発に依存しない社会をつくりたい』と望んでいる」ので「こうした中、まずは政府が原発に依存しない社会をどう実現していくかという大きな『道筋』を示すことが重要である」からなのである。
国民の多くが望んでいるかどうかは別として、ここでは看板の政治主導が引っ込んでしまっている。国民につらい道筋であっても厳しい選択を行うのが政治主導の趣旨であったはずだが、政治の考えや判断が示されないのでは、国会は閉めて世論調査で政治を決めればよくなる。政府・与党の先生方には議員辞職する覚悟はおありか。

2. ポスト3.11の論理構成を築こうとしなかった知的退嬰
不思議なのは、2030年代までは原発のリスクは無いものとし、2040年以降には原発のリスクが生じると想定していることだ。2030年代までリスクが無いとするのは、「原子力安全規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼動とする」ことで担保されていると考えているようだ。
しかし「原子力安全規制委員会の安全確認」は政府与党の政治的リスクを付け回すだけで、国全体のリスクが減るものではない。安全神話が崩壊した現在、一定のリスクはあるものと想定するのがこの国のリスク管理の大前提である。政府は、2030年代にかけても一定のリスクが存在することを誠実に語らなければならない。それによって、原発のリスクに対する実のある議論が展開されるのに、政府はそれに正面から向き合おうとしない。
参考:全国の原子力発電所 運転開始年・経過年数順(末尾に掲載)2040年以降も稼動する原子炉は6基ある。

3. 地球規模で失敗が証明されている政策へのめり込む不思議さ
戦略では、「2.グリーンエネルギー革命の実現」という勇ましいタイトルが踊る。
政府の文章に「革命」なる文言があるのはどうかと思う。本家のアメリカではA Green New Deal と称されている。名称はともかく、アメリカ、ドイツ、スペインではすでに再生エネルギーの利用は失敗している。証明済みの失敗策をなぜ周回遅れで真似しょうとするのか。国民の購買力を奪い取り国民経済を疲弊させるだけである。供給側でも、シャープは太陽光パネルで大赤字を計上して経営の屋台骨が揺らいでいる。需要サイド、供給サイド両方にとって疫病神なのである。補助金付でこのざまなのであるから、これ以上情けをかけることは無いと思う。

参考
JC-NET 「全国の原子力発電所 運転開始年・経過年数順 敦賀・美浜・高浜・島根・玄海」より
http://n-seikei.jp/2011/03/post-2446.html

- 原発 号基 運転開始 経過年数 型炉
1 敦賀発電所 1 1970 41 沸騰水型原子炉
2 美浜発電所 1 1970 41 加圧水型原子炉
3 福島第一原子力発電所 1 1971 40 沸騰水型原子炉
4 美浜発電所 2 1972 39 加圧水型原子炉
5 福島第一原子力発電所 2 1974 37 沸騰水型原子炉
6 高浜発電所 1 1974 37 加圧水型原子炉
7 島根原子力発電所 1 1974 37 沸騰水型原子炉
8 高浜発電所 2 1975 36 加圧水型原子炉
9 玄海原子力発電所 1 1975 36 加圧水型原子炉
10 福島第一原子力発電所 3 1976 35 沸騰水型原子炉
11 美浜発電所 3 1976 35 加圧水型原子炉
12 伊方発電所 1 1977 34 加圧水型原子炉
13 福島第一原子力発電所 4 1978 33 沸騰水型原子炉
14 福島第一原子力発電所 5 1978 33 沸騰水型原子炉
15 東海第二発電所 1 1978 33 沸騰水型原子炉
16 福島第一原子力発電所 6 1979 32 沸騰水型原子炉
17 大飯発電所 1 1979 32 加圧水型原子炉
18 大飯発電所 2 1979 32 加圧水型原子炉
19 玄海原子力発電所 2 1981 30 加圧水型原子炉
20 福島第二原子力発電所 1 1982 29 沸騰水型原子炉
21 伊方発電所 2 1982 29 加圧水型原子炉
22 女川原子力発電所 1 1984 27 沸騰水型原子炉
23 福島第二原子力発電所 2 1984 27 沸騰水型原子炉
24 川内原子力発電所 1 1984 27 加圧水型原子炉
25 福島第二原子力発電所 3 1985 26 沸騰水型原子炉
26 柏崎刈羽原子力発電所 1 1985 26 沸騰水型原子炉
27 高浜発電所 3 1985 26 加圧水型原子炉
28 高浜発電所 4 1985 26 加圧水型原子炉
29 川内原子力発電所 2 1985 26 加圧水型原子炉
30 福島第二原子力発電所 4 1987 24 沸騰水型原子炉
31 浜岡原子力発電所 1 1987 24 沸騰水型原子炉
32 敦賀発電所 2 1987 24 加圧水型原子炉
33 泊発電所 1 1989 22 加圧水型原子炉
34 島根原子力発電所 2 1989 22 沸騰水型原子炉
35 柏崎刈羽原子力発電所 2 1990 21 沸騰水型原子炉
36 柏崎刈羽原子力発電所 5 1990 21 沸騰水型原子炉
37 泊発電所 2 1991 20 加圧水型原子炉
38 大飯発電所 3 1991 20 加圧水型原子炉
39 もんじゅ 1 1991 20 高速増殖炉
40 柏崎刈羽原子力発電所 3 1993 18 沸騰水型原子炉
41 浜岡原子力発電所 2 1993 18 沸騰水型原子炉
42 志賀原子力発電所 1 1993 18 沸騰水型原子炉
43 大飯発電所 4 1993 18 加圧水型原子炉
44 柏崎刈羽原子力発電所 4 1994 17 沸騰水型原子炉
45 伊方発電所 3 1994 17 加圧水型原子炉
46 玄海原子力発電所 3 1994 17 加圧水型原子炉
47 女川原子力発電所 2 1995 16 沸騰水型原子炉
48 柏崎刈羽原子力発電所 6 1996 15 沸騰水型原子炉
49 柏崎刈羽原子力発電所 7 1997 14 沸騰水型原子炉
50 玄海原子力発電所 4 1997 14 加圧水型原子炉
51 女川原子力発電所 3 2002 9 沸騰水型原子炉
52 東通原子力発電所 1 2005 6 沸騰水型原子炉
53 浜岡原子力発電所 3 2005 6 沸騰水型原子炉
54 志賀原子力発電所 2 2006 5 沸騰水型原子炉
55 泊発電所 3 2009 2 加圧水型原子炉
56 島根原子力発電所 3 2011 0 沸騰水型原子炉