日本的経営の光と影

日本的経営について対照的な記事が2本掲載された。
A. 1/30(月)日経・経営の視点「反面教師のコダック破綻」
B. 2/12(日)日経・中外時評「日の丸技術復活の条件」

この二つの記事の間には、2/3(金)パナソニックの公表した今期の純損失予想(製造業では最大級)7,800億円の赤字がある。そのほか、シャープの2,900億円の赤字予想(2/1)、ソニーの2,200億円の赤字予想(2/2)があった。

Aの記事は日本的経営をたたえる内容であったが、パナソニックなどの赤字予想を受けてBの記事で方向転換を図ったものと読める。ただそれだけでは、事象の後追いということになってしまう。

ここから読み取るべきは、AもBも日本企業の体質に根ざすということである。Aは日本企業の強みが発揮された事例であり、逆にBではそれが裏目に出て動きの速いグローバル競争に追いついていけない弱点が晒された。根は同じだということだ。

日本企業はグローバル競争の時代に相応しい体質に改めなければならないというのがBの主張だが、企業体質が一朝一夕に変わるものではない。問題は、日本企業が強みを発揮できる場面にどう嗅覚を働かせるかである。そこを捉えきれる日本企業には、世界経済の中で新たな成長機会を見出すことができるだろう。そのような成功事例はこれまで数多くあった。そこに学ぶことが、今後の成功につながろう。

2/17日経「転機の企業収益」「迫られる構造改革」の特集が始まった。
第一回目は、「デジタル革命 家電崩す」である。


A. 1/30(月)日経・経営の視点「反面教師のコダック破綻」「技術の種追求は日本の長所」
この特集記事は、「コダックの破綻は、最近では停滞の要因にされる日本的経営の美質と可能性を再認識させる」と日本的経営を賞賛している。はたしてそうなのか。
特集記事は、「コダックの破綻には米国企業が直面する2つの弱点が潜んでいる」と指摘している。
1. 富士フィルムを対比させる形で富士フィルムは潤沢な内部留保を生き残りのための事業買収、再編に活用した。これに対し、コダック内部留保を株主還元にまわさざるを得なく、企業の復元力を奪い、M&Aによる事業組み替えも困難にした。

2. 株主の短期的な収益極大化要求は研究開発に深刻な問題を突きつける。日本のカメラメーカー研究開発を異分野へ展開した。次の主力商品の技術、可能性を秘めた技術の開発で手を抜かなかったことが新分野への展開を可能にした。コダックは株主の意見に耳を傾けすぎて、将来の経営の展開力は落ち、発展の余地は狭められた。

これらから今も新規分野に展開する日本企業に軍配をあげ、日本的経営を賞賛しているのである。ところが日経はこれとは相異なる議論を展開している。


B. 2/12(日)中外時評「日の丸技術復活の条件」「オープンな若い感性重要に」

冒頭で「日本のデジタル産業が苦境に陥っている。ソニーパナソニックが大幅な赤字となり、NTTドコモは相次ぐ通信障害に苦しむ。ウォークマンiモードなど日の丸技術を世界に誇った企業はどうしたのか」と日本企業の低迷を嘆いている。

日本企業が遅れをとっている理由を特集記事は次のように分析する。

デジタル分野における日米逆転の理由の一つはインターネットへの対応にある。モノづくりを自負する日本企業は個々の製品に力を入れたが、アップルなどはネットを使った新しい娯楽の仕組みを提案した。

理由はもう一つある。ネット対応と裏返しの話でもあるが、過去に成功した事業に見切りを付けられたかどうかだ。

部品から製品、サービスまで社内で手がける東海岸モデルは、一度成功すると、それを守ろうとする力が働くという。
一方、半導体や製品、ソフトなどを異なる企業が提供する西海岸モデルは、階層ごとに競争原理が働き、産業集積としても強くなったと彼女(注:カリフォルニア大学、アナリー・サクセニアン教授)は指摘する。日本や欧州で苦戦する企業は東海岸モデルだともいえる。

垂直統合が技術革新に遅れる理由として、同教授は人的な面も挙げる。垂直統合型の企業は終身雇用制など人的流動性の低い会社が多い。経営者には過去に成功した人が就き、後に続く社員はボスが築いた成功モデルを簡単には変えられない。
その点、アップルやグーグル、フェイスブックは過去の成功資産にも上司にも気を使う必要がない。技術の流れが定まっているときには継続が力になるが、ネットの登場など技術の転換点では身軽さが勝敗を分ける。