法人減税が成長戦略になるのか

5/18日経「成長戦略第2段」「設備投資、年70兆円めざす」「首相、3年で政策総動員」「法人減税など、大胆改革見送り」

日経は、法人減税や解雇規制の緩和など企業が求める大胆な改革案は盛り込まれなかった、と不満を表明している。

法人減税が見送られたことに対して日経は財界の立場を代弁しているのだが、法人減税がなぜ成長戦略になるのかを明らかにしないとその主張の根拠が薄らぐ。とりわけ消費増税を進めたいのなら。

「経済界からは不満が漏れる」と財界の意向を伝えているように、外資を積極的に導入して経済を活性化しようとする志は感じられない。せいぜい、生産の海外移転を引き止めようということなのか。それすら、本当に実現できるのか疑わしい。まして、減税によって設備投資が誘発されるとは思えない。

法人減税を行って確実に実現できる効果はひとつだけある。それは、株主価値が減税の分だけ向上することである。例えば、実効税率を40%から35%に引き下げるとして、EPSは減税分だけ増加し株式価値が8.3%増加する。これは零細投資家にはたいしたことはないように見えるかもしれないが、(PERが変わらないとしたら)上場企業のオーナー経営者が時価1,000億円の自社株を所有していたとすると、何もしないでその時価は1,083億円に跳ね上がる。その原資は、赤字国債の積み増しである。他方、庶民は消費増税で3%分の購買力を奪われる。日本でも、オキュパイ・兜町運動が起きるかもしれない。
もう一つやりきれないのは、外国人投資家株式所有比率が約3割なので、減税による政策効果の3割が海外に流出することである。赤字国債を積み増して何で外国人投資家に貢献しなければならないのかと嘆きたくなる。