オリンパスの企業統治 取締役会、監査役会の改革

オリンパス企業統治

ウッドフォード氏は、解任される前に森副社長に対して詰め寄った。
Mr.Mori, who do you work for?
I work for Mr. Kikukawa, I am loyal to Mr. Kikukawa.

森氏の心情はすべてとはいわないが、ほとんどの日本企業の社内取締役、社内監査役に共通するものではないだろうか。このような心情がある限り、いくら制度をいじっても日本企業の企業統治改革は困難である。このことは度重なる監査役制度の改革があまり有効でなかったことから誰もが知っていることである。

オリンパスは少数の取締役の暴走によって株式価値のみならずとてつもなく名誉を失ってしまった。失った名誉の回復はオリンパスの取締役、監査役の自浄能力にかかってくる。では彼らには名誉回復を担う資格があるのか。下記の役員の一覧表を参照されたい。社内取締役10名中7中塚氏と10ウッドフォード氏を除き2009年以前に取締役に選任されている。常勤監査役1今井氏も2004年の選任である。2009年以前に選任された取締役、監査役は今回の事件の共犯者であったかそれを見抜けなかった無能者であった。彼らには名誉回復を担う資格はない。7中塚氏は、今回の事件との関連性がうわさされるITXの代表取締役会長を兼務している。不適格であろう。10ウッドフォード氏は、渦中の人であり利益相反の可能性もあり得るので適格とはいえないだろう。そうなると、残された社外取締役3名と社外監査役2名に現在の状況を打破することが期待される。また、会社法社外取締役や社外監査役にそのような役割を期待している。ただ、社外取締役のうち13林氏は、やはりITXの監査役を兼務しており今回の事件との関連が疑われる立場にあり、改革メンバーの役割を担うことは出来ないだろう。

社外取締役2名と社外監査役2名の改革メンバーにとって、機能しなかった取締役会と監査役会の改革が緊急の仕事である。全取締役、全監査役の辞表を取りまとめ、新取締役、新監査役選任のための臨時株主総会の開催を代表取締役に求めなければならない。その際に改革メンバーは指名委員会を立ち上げ、取締役および監査役候補者を選ばなければならない。これを代表取締役に委ねてはこれまでやってきたことの繰り返しである。その際のポイントは、取締役と監査役は会社または株主の利益を代表する存在であるという点である。経営者としての資質とは別に考えるのである。経営者として能力のあるものは、「執行役」として腕を振るってもらえばよい。今の社内取締役が特定の取締役への忠誠心で選ばれたのでなければ、「執行役」に選任される可能性は高い。会社法の下では、オリンパス監査役会設置会社から委員会設置会社へと統治機構を変えることになる。現在事件を調査している「第三者委員会」も新たな取締役会の下で客観性と独立性を担保されたうえで本事件の解明にあたる事になる。

ここまでの改革が進めば、オリンパスの名誉を回復する道筋は開かれるのではないだろうか。あとは、新たな器に盛られた取締役、執行役がそれぞれの役割を自覚して株主、会社の利益のために働くことである。

氏名 就任 摘要
- 取締役13名、社内10名、社外3名 - -
1 高山 修一 2006 -
2 森嶌 治人 2005 -
3 鈴木 正孝 2005 -
4 柳澤 一向 2005 -
5 塚谷 隆志 2006 -
6 渡邉 和弘 2008 -
7 中塚 誠 2011 ITX代表取締役会長
8 西垣 晋一 2009 -
9 川又 洋伸 2009 -
10 Michael C. Woodford 2011 -
11 林田 康男 2011 社外
12 来間 紘 2011 社外
13 林 純一 2008 社外、ITX社外監査役
- 監査役3名、社内1名、社外2名 - -
1 今井 忠雄 2004 常勤
2 島田 誠 2004 社外
3 中村 靖夫 2004 社外